元陸軍少尉の小野田寛郎さん死去、91歳


30年ジャングル生活、「自然塾」で青少年育成

元陸軍少尉の小野田寛郎さん死去、91歳

小塚の丘(ジャパニーズ・ヒル)を訪れた元日本兵、小野田寛郎元少尉(中央)=1974年3月、フィリピン・ルバング島(時事)

元陸軍少尉の小野田寛郎さん死去、91歳

 フィリピン・ルバング島に戦中戦後の30年間潜伏してジャングル生活をした後に帰国した元陸軍少尉で「小野田自然塾」理事長の小野田寛郎さんが16日午後4時29分、心不全のため都内の病院で死去した。91歳だった。自宅は東京都中央区佃。葬儀は家族で行う予定。

 親戚によると、体調が優れないため今月6日から入院していた。3月に自衛隊で講演する予定で、楽しみにしていたというが、9日に容体が急変した。

 和歌山県出身。旧制海南中学卒業後、商社勤務を経て陸軍に入隊し、陸軍中野学校二俣分校でゲリラ戦の特殊訓練を受けた。1944年フィリピンに派遣され、ルバング島でゲリラ戦の指導を命じられた。

 終戦後も「任務解除の命令がない」とゲリラ戦を続行。ジャングルで冒険家の男性に会ったことをきっかけに、74年3月に帰国した。

 翌75年4月、ブラジルに移住。牧場を経営する一方、日本で84年から、キャンプを通して青少年の育成を図る「自然塾」の活動を始めた。89年には財団を設立し、理事長に就任。福島県塙町にキャンプ場を開き、経験を生かして野外活動の指導に当たった。長年の青少年育成が評価され、2005年11月には藍綬褒章を受章した。

 96年5月には、フィリピンの地元州知事の招きで22年ぶりにルバング島を訪問。マニラのマラカニアン宮殿で当時のラモス大統領と会談した。

 近年は、冬場に牧場管理のためブラジルに滞在する以外は日本で活動。自然塾での指導のほか、講演などで全国を飛び回っていた。