歴史ドラマの中で戦国時代の人物を「平和を…
歴史ドラマの中で戦国時代の人物を「平和を追求した人物」として描くのは疑問と歴史学者の山本博文氏が指摘している(『歴史をつかむ技法』新潮新書)。
戦国時代に「平和主義者」はいなかった。戦争のなかった平安時代にも江戸時代にも存在しない。平和主義は1945年以降の戦後に生まれたものだ。
平安時代も江戸時代も結果として平和が長期にわたって続いたのは事実だが、平和主義という思想があったわけではない。戦(いくさ)となれば日当目当てのアルバイト感覚で従軍する農民はいただろうし、「金はいらない、戦には行かない」というケースもあったろう。だが、「戦争そのものに反対」という思想があったわけではない。
ところがなぜか、昨今のNHK大河ドラマを含む歴史ドラマでは、主に女性の登場人物が平和主義者として皆の前で堂々と演説する場面が多い。
「ドラマはフィクションなのだから、どんな発言も構わない」という発想はあり得るだろうが、こうした反戦思想の存在は事実の問題として歴史の根幹に背反するだけに、ドラマとしての最低限のリアリティーが著しく損なわれる。観る側からすると「ウソくさい」のだ。
今月19日からは、明智光秀を描いた大河ドラマ「麒麟がくる」がスタートする。戦国時代に平和主義を叫ぶ女性(むろん男性も)がいたわけはないのだから、戦後日本と変わらぬパターンで戦争反対を叫ぶような場面がないことを祈るばかりだ。