今年は東京五輪・パラリンピックの年。それに…
今年は東京五輪・パラリンピックの年。それに合わせるように、3月30日からスタートするNHK連続テレビ小説「エール」は、まさにその成功を祈願するようなタイトルである。主人公のモデルは、高校野球の大会歌「栄冠は君に輝く」の作曲者、古関裕而(ゆうじ)とその妻だ。
古関は、早稲田大学の応援歌「紺碧の空」などに代表されるように、各大学の応援歌の作曲をし、プロ野球でも読売ジャイアンツや阪神タイガースなどの応援歌を作曲したことでも知られている。
その点では、ドラマを通じて五輪を応援する上で、主人公にふさわしいと言っていいだろう。その古関の第1回発売レコードは、出身地の福島市にちなむ「福島行進曲」と裏面の「福島夜曲(せれなあで)」である。
残念ながら、売れ行きはあまりよくなかったようだが、「福島夜曲」は、独特のタッチで一世を風靡(ふうび)した詩人で画家の竹久夢二の詩をもとに作曲されたものである。福島に滞在中に即興的に書かれた夢二の12の詩から3編を選んでいる。
その3編は「遠い山河たずねて来たに吾妻しぐれて見えもせず」「川をへだてた弁天山の松にことづてしてたもれ」「信夫(しのぶ)お山におびときかけりゃ松葉ちらしの伊達(だて)模様」(古関著『鐘よ鳴り響け』集英社文庫)。
この夢二の詩に詠まれた「吾妻」「弁天山」「信夫山」は、ここで育った気流子にとっても懐かしい山々である。その意味でも、五輪の成功のために心から「エール」を送りたい。