中国の広州で行われたクライミングチャイナ…


 中国の広州で行われたクライミングチャイナオープンの試合をテレビで見た。国際スポーツクライミング連盟公認の大会で女子決勝の場面。野中生萌選手が金メダル、伊藤ふたば選手が銀メダルだった。

 身体のしなやかさ、パワー、卓越した技術、登攀(とうはん)力のすごさに圧倒され、見とれるばかりだった。気流子もこのスポーツに挑戦してみたい気持ちがあるが、年を取り過ぎてしまって実行するのは無理。

 クライミングのワールドカップが始まったのは1989年だが、それ以前の70年代、北アルプス穂高の滝谷や剱岳の岩場で古典的なクライミングのルートをたくさん登った経験がある。

 その当時、野中選手のような技術を持った登山家はいなかった。故長谷川恒男さんら名クライマーの顔も浮かぶのだが、平地で行われる競技となることで技術が洗練されていった。

 片手でホールドにぶら下がったり、ジャンプしたりすることなどは岩場ではやらない。何が根本的に違うのか知りたくて、オーストリア生まれで2008年ワールドカップで総合優勝したクライマー、デビッド・ラマさんに会った時、聞いてみた。

 「差がないと思う」と彼は答え、違いを一つ指摘。「ボルダリングでは色で示されたルートを登っていきます。ルートをセットする人がいて、課題を与え作っていく。それが山にはないのです」。ルートは自分で見つけるということだ。彼のようなクライマーも70年代にはいなかった。