岸田自民政調会長にインタビューし無理やりエールを送るサンデー毎日

◆「覚悟足りぬ」と不満

 “文春砲”の直撃弾を受けた森田健作千葉県知事ばかりが目立って、他の記事が砲撃の土埃(つちぼこり)の中で霞(かす)んでいるようだ。そのタイミングで岸田文雄自民党政調会長に次期総裁選への意欲を聞いたサンデー毎日(11月24日付)の記事は、岸田のキャラクターと妙に被(かぶ)っている。

 16日付小紙の論壇時評欄で筆者は韓国大統領選走者として与野党の指導者2人が取り沙汰されていることを紹介した。首相の李洛淵(イナギョン)と自由韓国党代表の黄教安(ファンギョアン)だ。現在「大勢論に乗っている」というが、彼らには「ドラマ」が欠けていて“つまらない男”呼ばわりされているという。盧武鉉や朴槿恵に比べたら波乱万丈のドラマ性がないというのである。

 岸田には安倍首相を引き継げる、あるいは乗り越えられる“ドラマ性”があるのか。インタビューした毎日新聞専門編集委員の倉重篤郎は、「食い足りなさが残った」「どうしても平板な印象を受けてしまう」と惜しむ。

 同誌の論調からすれば、「排外的なナショナリスティックな政権」から、リベラルな宏池会への交代を内心では望んでいるのかもしれないが、看板を背負う岸田には「安倍政治をどう乗り越えるのか。その戦略と覚悟がまだまだ足りない気がする」と倉重は不満を隠さない。

 「現行の従米・軍事的抑止力強化一辺倒路線を緊張緩和・軍縮路線にどう切り替えていくかをもっと真摯に模索すべきではなかろうか」と期待を込めたものの、岸田は土埃の向こう側にいるようで、輪郭がはっきりしない。無理やりのエールのような記事となった。

 また記事の中で岸田は当面、総選挙はないとの見通しを示しているのだが、同じ号の別の記事として「12月総選挙説が浮上」が載っている。相次ぐスキャンダルで閣僚が辞める中、11月20日には桂太郎を抜いて総理大臣在任最長となる安倍晋三は「難局を乗り切るため早期解散」をするという説がまことしやかに流れているというのだ。

 先のことは分からないのが政界だから、どうとでも書けるが、もしまかり間違って総選挙にでもなれば、岸田の見通しの甘さが目立ち、贔屓(ひいき)の引き倒しにもなりかねないのだが…。

◆責任転嫁する前川氏

 話変わって、大学入試の英語民間試験問題について、同誌は民間試験導入を決める過程で文部科学省審議官として答申に関わった前川喜平に話を聞いた。導入した役人側の張本人とも言える前川は、「忸怩(じくじ)たる思いもある」と「反省を口にする」ことはしたが、その口で「とにかくセンター試験を『変えろ』というのが、下村(博文文科相)氏と安西(祐一郎元慶応義塾塾長)氏の路線だった」として責任転嫁している。そもそもどうして民間試験を導入しようとしたのか。前川は肝心のそれを語っていない。

 これに答えているのが「東京大学文学部の阿部公彦教授(英文学)」だ。「教育の市場化・利権化がある。請け負った業者は『対策講座』の実施などで利潤を追求する。採算第一になれば優先されるのは業者の都合」だという見方だ。

 そんなことは議論の最初から分かっていそうなものだが、それでもなお導入決定された背景を知りたいのが、欲張りな読者というものだ。前川の名前と写真が前面に出ているから、また前川が“爆弾発言”でもするのかと思いきや、中途半端な反省の弁とは期待外れもいいところである。

 結局、記事は導入中止のきっかけとなった現文科相の萩生田光一や、「とにかく変えろ」と迫った下村博文を文中に出して、「業者の利権」などの単語をちりばめて、悪い印象を塗りたくっただけで終わっている。

◆受験生が望む情報を

 毎号入試関連記事を載せる「教育の毎日」らしく“予備校並みに詳しい”入試情報を駆使して、受験生や教育関係者が望む情報を出してほしいものだ。(敬称略)

(岩崎 哲)