トランプ米大統領「再選」分析に当惑したかの「サンモニ・風をよむ」

◆弾劾調査でも「優位」

 来年11月3日投票の米大統領選挙まであと1年となったが、再選を目指す共和党のトランプ大統領に対し、民主党は多数を握る下院を舞台にウクライナ疑惑の大統領弾劾調査で打撃を与える一方、候補者乱立の予備選を進めている。

 「3年前には多くの人が想像しなかったことが起きるかも知れません」とのアナウンスで、10日のTBS「サンデーモーニング」は看板コーナーである「風をよむ」に入った。何かといえば、早くも「“トランプ大統領、再選?”」と題した内容だった。

 共和党でも泡沫(ほうまつ)扱いだった不動産王が、「アメリカ・ファースト」を掲げて頭角を現して以来、同番組は暴言を繰り返すトランプ氏に批判的だが、3年前に本命視されたクリントン元国務長官を破る大番狂わせで当選した。が、すぐ有権者に愛想を尽かされると見ていたのだろう。

 ところが、米政治専門メディア「ポリティコ」が6日公表の調査でトランプ氏が「再選される」と56%が回答し、ニューヨーク・タイムズ4日付も同氏が「優位性を維持している、もしくは勢いを増している」と報道したことに当惑したかのような特集だ。

 番組では、温暖化対策の「パリ協定」離脱など「過激とも言える政策にもかかわらず」再選の機運が高まる強さの要因について専門家に聞いていた。上智大学教授の前嶋和弘氏は好調な経済とともに、大統領就任後ただちに選挙運動を始め、支持が揺れる層だけ戸別訪問して集めたビッグデータの活用を挙げた。

 また、6700万人近いフォロワーがいるツイッターに関し、高千穂大学教授の五野井郁夫氏は「大統領選の最中から現在まで自分に対して攻撃してくるメディアは全部フェイクニュースだと突っぱねている。大手メディアに耳を貸さないように支持者を説得してきた結果、トランプ大統領に不利なものは一切信じない支持者たちが出来上がっている」と述べた。

◆批判ばかりの出演者

 しかし、共和党支持層にも選挙でほとんどが民主党支持を打ち出す米メディアの偏りに不満がある。同番組も出演者はトランプ氏に批判的で、「トランプ流は…人々の邪悪な部分を代弁している」(毎日新聞論説委員・元村有希子氏)、「バカな大将、敵より怖い」(経済評論家、佐高信氏)、「相当ろくでもない大統領が米国に生まれた」(ジャーナリスト、青木理氏)など、ヘイトスピーチ並みのコメントが続いていた。

 「人々の邪悪な部分を代弁」と言っては、まるで投票した有権者が邪悪な心で選んだと言うに等しい。ここまで聞くとトランプ氏の支持者をも悪者扱いしているような印象になる。番組は「トランプ氏は常識的でアメリカのために闘っているから大好き」(女性)などトランプ氏支持者の声も拾っていたが、これら有権者はトランプ氏によって「出来上がった」支持者なのだろうか?

 むしろ、なぜトランプ氏を「常識的」と番組と正反対の評価をするのかが重要に思える。オバマ前大統領時代の8年間のリベラル路線に何かの「非常識」を感じたのかも知れないし、国境の壁で不法入国や麻薬流入を取り締まるのが常識的と感じたのかも知れない。邪悪、バカ、ろくでなし…とあげつらうだけでは支持の理由は知り得ない。

◆予断ない「日曜討論」

 同日放送のNHK「日曜討論」でも米大統領選がテーマの一つだった。大統領弾劾調査について早稲田大学教授の中林美恵子氏は、「上院で最後にどういうふうに判断されるかというところまで見ないと分からない問題だ」と言い、空振りでトランプ氏が反撃に出るか、証拠を固められて不利になるかは今後の展開次第。

 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は、「来年9月あたりの経済状況が一番重要になる」と述べ、予測は先送りした。勝敗を占うには時期尚早といった予断のない慎重な見方が示されていた。

(窪田伸雄)