3年ぶりの経済対策にバラマキにならぬようにと注文付ける日経、毎日

◆台風被災地復興が柱

 政府が新たな経済対策づくりの作業に入った。甚大な被害をもたらした台風19号などで被災した千葉、長野両県など被災地域の復旧・復興が大きな柱である。

 経済対策の策定は2016年8月以来約3年ぶりで、19年度補正予算と20年度当初予算を一体的に「15カ月予算」として編成し、総額は5兆円規模に上るという。

 策定を指示した安倍晋三首相の8日閣議の発言には、「海外発のリスクへの対応、生産性の向上などのため…」とあるから、対策には景気の下支え対策、つまり、米中貿易摩擦による海外経済の不透明感や消費税増税による経済の下振れリスクへの対処という内容も含まれている。

 だからだろうか、経済対策についての論評を掲載した12日付毎日、日経の社説は、見出しで「景気よりも防災に重点を」(毎日)、「経済対策では『賢い支出』を厳選せよ」(日経)と注文を付けている。

 毎日は「1000兆円を超す借金を抱えているのに、景気対策と称して必要性の乏しい支出で予算を膨らませるのは禁物だ」「防災以外の景気対策は、必要性の疑問を抱かせるものが多い」として、「効果的な防災事業に重点化することが必要だ」と強調する。

 日経も同様に、「予算バラマキとならないよう」、対策は「賢い支出」を厳選すべきだ、というわけである。

 特に毎日は、政府は「景気は緩やかに回復している」との認識を変えていない、それなのに対策を打つのは矛盾している、とかなり手厳しい。

◆増税の影響長期化も

 ただ、そうは言っても、増税から40日以上が経過して徐々に表れてきている経済の状況は、予想通り、芳しいものではない。経済産業省の商業統計では増税後の反動減が確認され、百貨店では「想定以上の買い控え」を訴える声も目立つ。街角の景況感は台風の影響もあり8年5カ月ぶりの低水準となっている。

 19年度当初予算で対処した増税への施策が、やり方や額で適当であったかという問題もあろうし、増税そのものにも米中摩擦の最中という実施時期の悪さも含めて問題がなかったわけではない。それでも、両紙は増税には賛成で積極的に進めた立場である。

 その意味では、今回の台風19号などによる災害は想定外、より正確には想定以上の事態であり、今回の経済対策に景気対策がある程度含まれるのも当然であり、やむを得ないであろう。毎日は「これ以上の景気対策は(将来世代への)つけをますます増やしてしまう」と批判したが、毎日の言うように、追加の景気対策を何もせず増税の悪影響がさらに長引けば、税の自然増収がそれだけ見込めないことになり、結果として逆に意図しないつけを増やすことになる。

◆必要なインフラ強化

 河川の堤防強化など国土強靭(きょうじん)化政策については、日経が指摘するように、人口減少と高齢化で社会保障費が増大し財源が限られる中、全ての既存の社会資本を維持・更新して強靭化するのは難しいため、中長期的な国土の在り方について議論を深め、効率的な事業計画をつくるべきであろう。今回の対策で政府が取り組むとしている防災・減災対策では、日経が提案するITによる監視システムの導入などで効率化を進めることも一案である。

 ただ、温暖化の影響などで年々大規模化する災害に対し、効率化だけで防災・減災が進められるわけではない。必要なのは地道で継続的なインフラの強化である。

 経済同友会の桜田謙悟代表幹事は12日の会見で、民間資金を活用した防災インフラ強化策を専門チームで検討し、来年3月をめどに政府に提言するという。具体的には企業の出資や地域金融機関の融資などを活用し、橋や河川堤防などを強化。工事完了後は国や地方自治体が設備を所有し民間企業に運営・管理を委託するといったPFIの手法である。新聞でもこのような実のある提案が出ないものか。

(床井明男)