北非核化の四大争点

正確な数量を把握せぬ米

 6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談では焦点である「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)が曖昧なままで終わった。米朝とも「非核化」するとしているが、具体的方法、日程が何も決まっていない。

 韓国の総合月刊誌『新東亜』(7月号)では「申仁均(シンインギュン)自主国防ネットワーク代表」による「北非核化の四大争点」を特集している。四つの争点とは、「①北朝鮮の核兵器搬出日程と搬出規模②大陸間弾道ミサイルの解体時期と方法③国際視察団の北入国時期と査察日程・水準④北が非核合意を破棄したり不誠実に臨む場合の軍事オプションカード再登場の可能性」だ。

 北朝鮮には「約60個の核弾頭がある」と米国防情報局(DIA)は分析しており、米国は「全弾頭を除去して、米国へ運び、解体する」方式に固執している、という。これに対して北朝鮮側は自身で弾頭を除去し「米テネシー州オークリッジの国家安保団地で処理する」案にこだわっている。これは米国側に北の核兵器技術の水準を見せたくないための措置だという。

 ただし、ここで基本的な問題は「米国が北朝鮮の核弾頭と核物質保有量を正確に把握していない」ことだ。北が提示したものが全量だという保証はどこにもない。隠し持つことも可能になる。誠実な査察が可能なほど、米朝両首脳の信頼関係があるのかが問われてくる。

 さらに、北は「核専門人材の再就職、純粋に科学技術分野に転用することを理由に、軽水炉建設と研究団地造成など莫大(ばくだい)な費用を要求するものとみられる」ことだ。「非核化の費用は日本と韓国が出す」とトランプ米大統領は言い放ったが、国家間の調整がどの程度進んでいるのか疑問である。

 第2の「弾道ミサイルの解体」は北の技術力露出以外に、別のところへ飛び火する可能性がある。というのは北朝鮮が短期間にミサイルを開発したのは外国からの技術支援があったと見るのが妥当で、「北朝鮮の弾道ミサイル開発を直接・間接的に支援した中国、ロシアなどと米国の間の外交的摩擦を引き起こす素地もある」からだ。

 第3の国際査察団の北入国、施設へのアクセスも簡単、順調に進むとは思えず、また第4の北が合意を反故(ほご)にしてきた場合の軍事オプション再検討もあり、非核化への道はまだまだ課題山積である。韓国の論調が北朝鮮の“誠意頼み”だけとは心もとないものだ。

 編集委員 岩崎 哲