保革対立が先鋭化する韓国 左右の論客が誌上で論戦

「北主導の統一」で認識の相違

 韓国で保守と革新の対立が先鋭化している。文在寅(ムンジェイン)政権が平昌冬季オリンピックで北朝鮮と合同チームを構成したり、国連の制裁にもかかわらず、大量の応援団を受け入れ、便宜供与していることに対して、保守陣営からは強い反発と反対がやまない。

 「平和の祭典」はどこへやら、全世界からアスリートが集い技を競う場で、国内の左右対立をさらけ出しているのだ。こうした形態は外憂の中でも内部抗争に没頭し、結果国を危うくしてきた歴史そのままである。

 東亜日報社が出す総合月刊誌「新東亜」(2月号)では「左派右派終末討論」の企画がスタートした。これは左右の論客がテーマごとに論を戦わせるもので、今回は「北朝鮮および北核問題解決法と文在寅政府の対北政策」が主題。左派からは「創作と批評」編集主幹の李南周(イナムジュ)聖公会大教授が、右派からは国家情報院北朝鮮担当企画官を務めた具海祐(クヘウ)未来戦略研究院理事長が登場した。

 まず「北核」について、右派は「凍結と非核化を対話の入り口」としているのに対して、左派は「対話を通した解決法が唯一」と強調する。北朝鮮側から見れば、対話をしている間に核開発を進められるわけで、左派は常に意識か無意識かは別に、北朝鮮の核開発を利してきた。とはいえ、右派が言う「凍結と非核化」は北朝鮮が絶対にのめない条件であり、これも現実的アプローチとはなり得ない。こうして韓国内で出口のない議論を続けていけばいくほど、北朝鮮に時間を与えるという構図は昔も今も変わっていない。

 北核に対して、同盟国米国の役割をどのように位置付けるかでも左右の差は大きい。左派の李教授は、「われわれが米国の言いなりになってはならず、主導的に出るべきだ」と主張するのに対して、右派の具理事長は「北朝鮮の新年の辞は韓米同盟亀裂を基礎にして、北主導の韓半島統一推進を本格化するという意思を表したもの」とし、米国を排除していこうという北朝鮮の狙いに警戒感を強める。

 李教授は、「南北が平和共存すればいいだろうという見解が多い。国家連合で共存・交流するシステムを作ることをまず第一目標にすべきだ」と主張する。これも北朝鮮の国家目標である「南侵赤化統一」を無視した見方であり、北朝鮮を“平和勢力”だと思い込もうとする左派のいわばファンタジーないしは意図を隠した作戦だとも言えよう。具理事長は、「北朝鮮が労働党主導の韓半島統一を追求するのは戦争の他に、韓国政治体制の変化を企てることを含む」として、このことを警戒している。

 「主体思想派」(主思派)に対する評価も違う。今や社会の各層に浸透している主思派について、李南周教授は「勢力は非常に周辺化した上に少数だ」と過小評価しようとする。さらに、そのような“周辺化した”主思派に対して、韓国社会は「積み重ねられた政治・社会力量でそれを克服できる」と言い張る。

 これは「主思派」を「北朝鮮」に置き換えても同じ見解だ。つまり韓国の「力量は十分に北に勝っている」から、「非軍事的レベルで一対一で対せば」北の思うようにはならないとの自信につながっている。

 しかし、今回の平昌五輪で見せた韓国を手玉に取る北の交渉術、南への思想工作、支持勢力形成などをみれば、「非軍事的レベル」でも韓国は劣勢に立たせられているのは明らかだ。

 最後に「北朝鮮を変化させる方法」について、「平壌が核凍結しない状況でも、米国を説得したり、米国と緊密な協議を通じて、経済分野の協力を行うべきだということで(左右両者は)共感した」という。「米国をよく説得すれば、核凍結は十分に成し遂げられる目標だ」と李教授は楽観し、具理事長も、「米韓同盟の信頼を高めてこそ、介入政策が成功する」と述べる。

 突き詰めていけば、左右の北朝鮮政策の根本的違いは「北主導の統一」に対する認識の違いとして表れる。左派は韓国には十分な力量があり、連邦制でも北に主導権を奪われないとし、右派は米国との信頼関係を後ろ盾にしていれば大丈夫だという認識だ。

 こうした議論を続けている間にも、北朝鮮は核ミサイル完成までの時間稼ぎができる。核を持った北が主導権を握るのは誰がみても明らかなのだが…。

 編集委員 岩崎 哲