「漢江の奇跡」に日本資金 「新東亜」記事中で認める
浦項製鉄所と京釜高速道路に
いまや韓国は「世界10位圏内の経済大国」を誇っている。サムスン、LG、現代自動車など世界でも名の知れた企業を持ち、文化面では「韓流」が世界を席巻している。わずか70年前までは世界最貧国に数えられていた国がこのように急速に発展した理由として韓民族の勤勉性や優秀さなどが挙げられるだろう。
しかし、いくら素質(人材)があったとしても、それを開花させる環境と条件(資金、技術)がなければ実現しない。戦後20年を経て1965年に締結された日韓基本条約で日本と結んだ請求権協定、経済協力協定は韓国の驚異的発展を可能にした一要因となったことは間違いない。
韓国政府はこの事実を教育現場でははっきりと教えていない。かつて自らを支配した日本の「カネ」で発展したなどとは口が裂けても言えない自尊心の問題なのだ。政府は一応、請求権協定、経済協力協定の資金がどのように使われたかの報告書を作ってはいるが、ほとんどの韓国人はこれを目にしたことがない。
しかし、朴正煕(パクチョンヒ)大統領が牽引(けんいん)した「漢江の奇跡」は今日の韓国の発展の基礎を作ったもので、これは政治的立場を超えて、韓国人の誰もが認めるものだ。そのシンボルともいえるのが浦項製鉄所(現ポスコ)とソウルと釜山を結ぶ京釜高速道路である。そして、この二つの巨大プロジェクトこそが日本の「カネ」が投入されて建設されたものなのである。
これをはっきり認める記事が総合月刊誌「新東亜」(4月号)に掲載された。ソン・ホングン同誌記者による「日本が領有権を主張する第7鉱区の過去・現在・未来」の記事だ。
「第7鉱区」とは韓国側の呼称で、済州島の南、九州の西、東シナ海の区域で、石油と天然ガスが埋蔵されていると推定される大陸棚を指し、日韓大陸棚協定で両国が共同開発することが決められている。
ここが共同開発鉱区になるまでには激しい攻防が繰り広げられた。日本政府が日本石油、帝国石油の油田開発を許可すると、韓国側は激しく反発し、国際司法裁判所の判例を引き出して、韓国の「管轄権主張が国際法上で当然だという理論的根拠」を示して対立した。
韓国側がこの主張を日本政府に呑(の)ませるために持ち出したのが、「請求権資金中2億㌦を総合製鉄所建設に使えるように」日本政府に支援を求めたことだった。製鉄所建設要求と大陸棚交渉をセットにして、日本側に譲歩を迫ったのである。
「結局、韓国側は大陸棚協議に応じる条件で日本側は総合製鉄所建設を助けることを約束した」のである。ソン記者は、「日韓交渉の水面下で活動した崔書勉(チェソミョン)国際韓国研究院院長が金山政英駐韓日本大使から確認した」内容であると紹介している。その結果、「2億㌦中、浦項製鉄建設に1億3200万㌦を使い、残りは京釜高速道路建設などに使われた」(ソン記者)。
日本が総合製鉄所建設に反対した理由は、「韓国の経済水準に合わない」ということだったと趙光齋(チョグァンジェ)元スペイン大使が同誌に語っている。趙元大使は大陸棚交渉時、韓国外交部条約課長を務めていた。
この記事はソン記者が大陸棚という国益を守る交渉で、日本から製鉄所建設支援を引き出すことができたという教訓を示そうとしたものだが、結果的に、その後、韓国の産業化の起点となった浦項製鉄所建設が日本の支援に依ったものであったことを韓国民に伝えるものとなった。
ただし浦項は、後に社長となる朴泰俊(パクテスン)氏と新日鐵の稲山嘉寛会長との国を超えた友情を抜きに語ることはできない。こうしたエピソードが隠されずに当たり前に知られる両国関係が築かれることが望まれる。
編集委員 岩崎 哲