北核問題論じる月刊朝鮮 中国に解決のカギなしと分析
72年米中接近に“責任転嫁”
北朝鮮の第4回核実験(1月)について中国が国際社会から責められている。北朝鮮の核・ミサイル実験を禁止している国連安保理事会の常任理事国であり、北朝鮮とは「唇歯」の同盟関係にある中国がその任を十分に果たさなかったというものだ。
これに対して、中国は強く反発する。人民日報の国際版である環球時報(1月8日付)が、「朝鮮核問題の『中国責任論』は歪曲された空論」だと反論した。
韓国も中国を非難する一人だ。「歴史上、最良の関係」だったはずの中韓関係が期待通りに機能せず、中国が“北の暴走”を許していることに対する苛(いら)立ちが露(あら)わになっている。日米などから示されてきた対中傾斜外交への懸念が現実化したわけで、朴槿恵(パククネ)外交失敗への批判も出てきた。
そうした中、朝鮮日報社が出す総合月刊誌「月刊朝鮮」(2月号)で、朴勝俊(パクスンジュン)仁仁川大教授が「中国共産党機関紙を通してみた中朝関係展望」の記事で、「中国の手には朝鮮核問題を解決するカギがない」と書いている。やや中国の主張に“説得”されて中国の立場に配慮したような記事になっているが、現在の韓国の置かれた地政学的立場が反映されており興味深い。
中国は環球時報の社説で、北朝鮮の核問題は「非常に複雑だ」としながらも、「外的原因は米国の対朝政策が敵対的な姿勢を堅持してきたため」と主張している。中国責任論ではなく米国責任論である。
これに対して朴教授は、「北の核開発の原初的な原因提供者が中国という基礎知識もない論説委員が書いた記事と推定せざるを得ない」と切って捨てており、北朝鮮が核開発に乗り出した国際的背景を分析している。その論理展開がいかにも韓国らしい。
朴教授は、「北朝鮮の核問題は大きく見て、1970年代初めの米国対中国・ソ連の1対2の三角構図冷戦体制が、米国・中国対ソ連の2対1三角構図へ再編される過程で派生した問題だ」と説明した。
どういうことかと言えば、1972年のニクソン訪中による米中接近によって、冷戦構造が大きく変わる過程で、北朝鮮は中国よりもソ連を頼らざるを得なくなった。しかし、ソ連は中国のようには北朝鮮を守らない。そのため北朝鮮は自主防衛体制、それも核ミサイル開発に行かざるを得なかったのだ、という論理展開だ。
「中国にも米国にも責任がある」という考えで、常に周辺強大国に“責任転嫁”してきた朝鮮の歴史的処世をそのまま反映した論理だといえるだろう。もっとも、自国の運命を自主的に決定できなかった地政学的条件を考えれば、無理からぬものもある。
また、韓国が「中国責任論」を言う背景には、中国はより深く北にコミットメントせよという願望が敷かれている。それが中国に肩入れしてきた朴槿恵政権の図ってきたところだ。
しかし、現実は厳しい。習近平政権は「金正恩(キムジョンウン)と一切の首脳訪問や接触を意図的に遮断してきた指導部」である。「現地調査目的で学者を派遣したり、実態調査をして各種非公式討論会をするなどして、中朝関係をレビュー(再検討)」してきた。昨年までの調査の結果、「ひとまず北朝鮮を抱いていく」という結論を出したという。
ところが、核実験、ミサイル発射の強行である。中国としても国連の対北制裁に同調せざるをえない。朴教授も「当分“冷たい”風が吹くのは避けられない」と分析している。
とはいえ、中朝関係には常に「関係を回復しようとする弾性」が働く。なので「韓国政府としても、そのような流れに綿密に対処しなければならない」わけで、日米韓が「中国責任」を追及するだけで、北核の「画期的解決策を用意できない」場合、「北核問題を解くカギを持たない」中国で、「北核容認論」が広がる可能性もあると警告している。
北朝鮮の核・ミサイル実験は中朝対日米韓という新たな冷戦構造を明瞭化させる可能性もある。
編集委員 岩崎 哲





