韓国の朴槿恵大統領、任期中に統一基盤準備

極東開発事業に南北とも期待

 韓国の朴槿恵大統領が韓半島の平和的統一に向けた基盤を任期中に準備することに改めて意欲を示した。南北分断が固定化し、韓国国民の関心も薄れつつある統一問題は本当に動きだすのだろうか。
(ソウル・上田勇実)

在韓米軍駐屯で周辺国対立も

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今月13日、青瓦台で会談する韓国の朴槿恵大統領(右)とロシアのプーチン大統領(青瓦台提供)

 朴大統領は18日、国会での施政方針演説で4大国政課題の一つとして南北統一問題に触れ、「必ず任期中に平和統一のための基盤を作り、北朝鮮が国際社会の責任ある一員として変われるよう努力していく」と語った。

 ここで言う「統一基盤準備」とは、国内的には統一インフラの強化、対外的には国際社会の支持拡大などを指すとみられる。統一省がまとめた朴政権の対北政策「韓半島信頼プロセス」によると、前者には「民族共同体統一方案の発展的継承」や「北朝鮮住民の生活の質改善を促す」などが列挙されている。

 民族共同体統一方案とは、1994年に金泳三政権が発表したもので、自主・平和・民主の3原則と和解・協力、南北連合、統一国家完成の3段階統一方案から成る。従って朴政権の目指す南北統一案は、北朝鮮が主張する連邦制統一案に韓国が同調し、大きな混乱を招いた金大中・盧武鉉両左翼政権の対北政策を除けば、歴代政権のものと基本的に同じだ。

 また朴大統領は先週、ソウルでロシアのプーチン大統領と会談し、北朝鮮北東部の羅津とロシア極東のハサンを結ぶ鉄道の運営や北朝鮮・羅津港の埠頭(ふとう)現代化など露朝合弁事業にポスコ(旧浦項製鉄)、現代商船、KORAIL(韓国鉄道公社)の韓国企業が参与することで合意した。

 この合意は、朴政権が「統一基盤準備」の一環として強調している「北方三角協力推進(三角=韓国・北朝鮮・ロシアまたは韓国・北朝鮮・中国)」として「北朝鮮の開放を誘導」(青瓦台)できると期待しているだけでなく、北朝鮮も「ロシア極東地域の成長潜在力に注目し、経済協力を強調している」(季刊誌『経済研究』)という。

 一方、韓国紙によると、柳吉在統一相の特命でつくられた「平和統一基盤準備の特別班」の会議がこのほど、韓国に亡命した故黄長燁元朝鮮労働党書記が生前住んでいたソウルの自宅で行われたという。

 これには、南北統一に対する韓国側の準備が不十分だと心配していた黄元書記の遺志を継ぐ意味が込められていたそうで、統一省が南北会談や交流・協力よりも南北統一準備に重点を置き始めたとする指摘も出ている。

 ただ、韓半島統一がどのような形で成されるのかをめぐり依然として周辺国の利害対立も予想される。

 政府系シンクタンク統一研究院は先日、「韓半島統一の未来-周辺4カ国の期待と役割」をテーマに学術セミナーを開催。この場で在韓米軍駐屯をめぐり日本と米国の参加者は「統一韓国は米国との同盟関係を維持すべき」だと「駐屯維持」を主張したのに対し、中国とロシアの参加者は「統一後も米軍が駐留して鴨緑江、豆満江を挟み中国軍と対峙(たいじ)するのが心配される」などとして「撤収」を主張した。