韓国・朴槿恵政権発足から2年、記録的な低支持率で苦戦
内政では人事でつまずき
膠着続く対日・北
韓国の朴槿恵政権が25日で発足2年になる。当初は高い支持率を維持したが、大型事故への不手際や人事の失敗、青瓦台(大統領府)をめぐる疑惑などが重なり、支持率は見る見る急降下。外交でも日本や北朝鮮との間で膠着(こうちゃく)状態が続いている。(ソウル・上田勇実)
脳会談は今年好機か
「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を主導した朴正熙元大統領を父に持ち、女性として初めて同国の大統領になった朴槿恵氏。当初は50%を超す比較的安定した支持率で国政運営に当たったが、就任2年目に早くも大きな試練を迎えた。
昨年4月、南西部沖で発生した大型客船「セウォル号」の沈没事故で、政府の対応のまずさが批判された。現場で救助に当たった海洋警察庁の活動に迅速さが欠けていたことや、乗客の家族が大勢待機する場所で政府関係者が配慮に欠ける行動をしていたことが判明し、世論の矛先は政府に向かった。
首相は責任を取って辞意を表明したものの、後任に指名した候補が相次いで落馬。ある候補は日本の植民地統治は「神の意思だった」とする過去の発言が問題視された。こうした閣僚人事には朴大統領一人の意向が強く反映されたといわれ、側近たちとの意見交換などを重視しない朴大統領個人のスタイルにも批判が集中した。
さらに昨年11月、朴大統領の元側近が青瓦台に介入していたとする疑惑を韓国紙が報じたことをきっかけに、朴大統領への不信感が増幅した。
今年に入り、朴大統領の支持率は一時30%台を割り込むなど記録的な低さとなり、レームダック(死に体)化を指摘する声まで上がった。その後、ようやく後任の首相が決まったことで30%台中盤まで盛り返してはいるが、特に密室で政策や人事が決められていくイメージが国民の間に広がり、「疎通不足だ」として不満が募っている。
朴大統領は歴代大統領と同様、米国との同盟関係強化を打ち出した半面、日本より中国との関係重視を印象付けている。その「中国接近」に対し、国民は思いのほか“寛大”で、経済関係の重要性や米中のG2時代における中国の役割の大きさなどから、世論はこれを良しとする雰囲気だ。
翻って日本との関係は改善の兆しが一向に見えていない。李明博前大統領による竹島(韓国名・独島)上陸と天皇陛下に対する事実上の謝罪要求などを発端とする日本の韓国に対する反発は、「親日派」だった朴正熙元大統領を父に持つ朴槿恵氏の大統領就任で収まるのではないかという期待が高まったが、実際はその逆だった。
朴大統領は対日政策の柱として、いわゆる従軍慰安婦問題を最優先に掲げた。被害者の高齢化や自分が女性であること、同問題をめぐり司法が政府の取り組みを促したことなどで、この問題をめぐり日本が韓国を納得させる新たな措置を講じない限り、安倍晋三首相との首脳会談を行わないと言い続けている。
日本側はこうした朴政権の強硬な態度に反感を抱き、「嫌韓」感情がかつてないほど高まっている。韓国側も安倍政権が“右傾化”に拍車を掛けているとみて、日韓関係悪化の主たる原因は日本側にあると主張。両者の関係改善はもちろん、首脳会談開催の見通しすら立っていない。
一方、北朝鮮との関係も膠着したままだ。北朝鮮は、就任1年目の朴政権に揺さぶりを掛ける狙いで、長距離弾道ミサイルの発射や休戦協定の白紙化宣言など、挑発的な言動を繰り返した。だが、これに対し朴大統領は断固とした姿勢を貫き、韓国の対北政策軟化をもくろむ北朝鮮側を一蹴した。
逆に朴大統領は「統一大当たり論」を披歴し、事実上の韓国主導による韓半島平和統一を主張し、南北統一への意欲を示している。また離散家族再会など人道問題をめぐる南北対話を呼び掛けている。しかし、北朝鮮は韓国独自の対北経済制裁などの「実利」を先行させない限り、韓国との対話には応じない構えだ。
対日、対北政策のいずれも突破口を開けずにいる中で、今年は朴政権にとって絶好の機会になる可能性がある。来年は4月に総選挙が実施され、再来年は大統領選挙の年だ。
与党セヌリ党は、支持率が低下傾向にある朴政権に見切りをつけ、非主流派を中心に大統領とは距離を置き始めている。腰を据えて大きな政策を遂行するのは、今年がラストチャンスだと言っても過言ではない。
お互い就任から約2年となる安倍首相と朴大統領との首脳会談も、今年が日韓国交正常化50年という大きな節目に当たることをうまく「追い風」にできれば可能性はありそうだ。