映画「金日成のパレード」、15日から東京などで再上映

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映画「金日成のパレード」

 一糸乱れぬ行進、軍事パレード、民衆の熱狂的な歓迎を受ける独裁者、彼の視察を受ける時代遅れの事業所――。北朝鮮を伝える映像はおおよそこれらに限られている。いずれも対外宣伝用に造られたもので、そこに北の民衆の素顔は出てこない。

 1989年にポーランドの撮影隊が北朝鮮建国40周年の記念行事を撮影した「金日成のパレード」は、91年に日本でも公開され、大きな話題となった。北が外部に公開した行事だが、それをありのまま映したことで、かえって、かの国の実像を雄弁に物語っていたからだ。

 同映画が11月15日から東京などで再上映される。加えて今回は「北朝鮮・素顔の人々」も同時上映される。「素顔―」に映されているのは、地方の街かど、自由市場(ジャンマダン)、コチェビと呼ばれる孤児などで、2005年前後、北朝鮮住民に託された隠しカメラで撮影されたものだ。警察の摘発を恐れながら、何の演出もなく、北朝鮮の生の日常が切り取られているドキュメンタリーフィルムである。

 衝撃的なのは公開銃殺のシーンだ。郊外の畑か広場に強制的に集められた住民が見守る中、銃弾を受け命絶えて躯(むくろ)と化す様子が映されている。

 また、哀愁を誘うのはわずかな金や食物を得るために、線路沿いで歌う少年の声だ。母を思って、くじけずに生きようとする姿が切ない。先進国であれば、タレント発掘番組に出て、スターになる道もあろうに、夢を抱けない国に暮らす少年の将来を思わずにはいられない。

 配給・アジア映画社。公開・11月15日(土)よりシネマヴェーラ渋谷、同月29日(土)より横浜ニューテアトル(予定)、12月13日(土)より大阪シネ・ヌーヴォのほか、キネカ大森、新潟シネ・ウインドなどで日程調整中。