情報機関の選挙介入疑惑蒸し返す-韓国
野党、「朴槿恵当選」にケチ?
昨年12月の韓国大統領選を前に情報機関の国家情報院が朴槿恵候補(当時)に有利な世論を形成するため、インターネット上の書き込みなどを通じて組織的に不正介入していたとされる疑惑を野党が蒸し返し、大騒ぎになっている。覆されることのない選挙結果にケチをつけるかのような政治攻勢に国民もうんざり気味だ。
(ソウル・上田勇実)
結果左右する影響力も疑問
疑惑は昨年8月から大統領選直前までの期間に国家情報院が組織的に政府・与党を支持し、逆に野党候補を中傷する書き込みをしたというもので、今年6月に前国家情報院長らが公職選挙法違反などの容疑で在宅起訴されている。
この問題を政府・与党攻撃の格好の材料と位置付けた野党の強い要請を受け、8月には疑惑を糾明する国会聴聞会が開かれたほか、ソウル中心部では野党陣営総出によるキャンドル・デモも行われた。
その後、ひとまず騒ぎは収まったかに見えたが、今度は野党側からツイッターによる「介入事実」をつかんだとする問題提起がなされ、再び疑惑が蒸し返されている。
野党が公開した「介入事実」によると、朴候補を支持する一方で野党系だった文在寅候補と安哲秀候補(いずれも当時)を中傷するツイッター約5万件の中に、国家情報院の職員が直接作成したか、他人が作成したものを引用したものが確認されたという。
例えば、安候補が出馬表明したのを受け「安哲秀は財閥攻撃で国民の人気を集めているが、実際には財閥から想像を絶する支援を受けている」(9月27日)と投稿。野党系候補が文候補に一本化された後には「記号1番(与党の朴候補)は大韓民国、記号2番(野党の文候補)は朝鮮民主主義人民共和国」(11月25日)、選挙戦が佳境に入ってからは「文在寅が北朝鮮の体制を称賛する教育監(自治体教育行政のトップ)とパートナーであるのを見ただけでも自分の正体を現している。主敵の対南赤化綱領に同調し、これを公約に掲げる人物が大統領になれるだろうか?」(12月12日)といった具合だ。
野党は年に1度の国政監査の場を使ってこれらを暴露し、国民に最大限アピールしようとしている。国政監査では同疑惑に対する捜査をめぐり、国家情報院の介入をより積極的に追及しようとした検察の前捜査責任者と介入事実を隠蔽しようとしたのではないかとする疑いが持ち上がっている検察幹部との舌戦がテレビで生中継されるなど“劇場効果”も満点だ。
ただ、仮にこの「介入事実」が事実であったとしても、果たしてそれらのツイッターが有権者の投票行為にどれだけ影響を与えたかは疑問が残るところ。朴候補は100万票以上の差で勝ったため、介入があっても選挙結果を左右するほどのものとは到底言えない。そのためか野党の主張はいまひとつインパクトに欠けている。国民の民生問題そっちのけで、政争に明け暮れているという印象も与えかねない。
情報機関による世論工作は日常的なものといわれる。特に保守系の李明博前政権では親北世論の拡散防止に力を入れていたようで、実際、韓国に定着した脱北者たちの中には、国家情報院から左翼系(親北朝鮮系)のサイトに反対意見を1日一定件数以上書き込むよう依頼され、小遣い稼ぎをする人たちもいた。