「イカゲーム」世界的大成功での「不満」

「ネットフリックスだけ儲けて」

 「イカゲーム」の世界的大ヒットで韓国は“Kカルチャー”隆盛に気を良くしている。ところが、唯一不満なのが「いくらヒットしても、儲(もう)けているのはネットフリックスだ」という点だ。

 新東亜(12月号)で大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏が「イカゲームの想像以上の波及効果」を書いている。韓国にも莫大(ばくだい)な産業的波及効果がある、と主張するものだ。

 既に“韓国のビートルズ”といささか褒め過ぎの防弾少年団(BTS)の活躍もあって、韓国の文化コンテンツは国際的認知を受けた。韓国の成功は韓国市場から世界に波及させたのではなく、最初から世界市場に打って出たことだ。BTSは英語で歌を歌い、イカゲームは配信登録制のストリーミングサービス、ネットフリックスを通じて世界に発信された。乗せるプラットフォームからして違ったのだ。

 「儲けていない」と韓国人が思うのも無理のない話で、世界で売り上げた約970億円のうち、韓国が手にしたのは製作費の25億円だったことだ。ネットフリックスは40倍以上の利益を得たことになる。

 さらに韓国人を悔しがらせているのが知的財産権(IP)をネットフリックス側が持っていること。韓国には製作代しか入らないのである。世界中の人が見れば見るほど、ネットフリックスが儲かる仕組みになっている。

 ところが、チョン氏は韓国の文化体育観光部と韓国文化研究院が出した資料を引用する。それによると、BTSがビルボードチャート1位で所属会社が得た直接収入が「約237億円」、化粧品・食料品・衣料品など関連産業の輸出額が「約360億円」、その他間接的効果で「約1650億円」に達したという。

 イカゲームがBTSのように関連グッズや製品の収入があるわけではないが、チョン氏は「Kブランド全般に対するグローバル認知度と価値の上昇」こそが「最も大きい波及効果」だと強調した。

 こうした成功を持続化させるために、チョン氏は幾つかの条件を挙げた。その一つが「グローバルスタンダード化」だ。世界標準に合わせていくということだが、それでは「韓国」はどこへ行ってしまうのか。「Kコンテンツ」から「K」を抜けば、韓国が享受するはずの利益も縮小していくのではないか。韓国人が生み出すコンテンツを薄めては元も子もなくなる。

編集委員 岩崎 哲