中国の対北政策、北朝鮮は中国「死活の地」

張成沢粛清後も変化なし

 北朝鮮の張成沢が粛清されたことで、さすがの「中国も対北政策を変えた」とする見方が出され、一定の支持も受けた。だが、事実はそうではないと「新東亜」(2月号)が主張している。

 同誌は東亜日報社が出す総合月刊誌では、「特集・張成沢粛清後、金正恩の北朝鮮」を組み、「北は中国安保の喉、米国退いても放棄せず」の分析を載せている。

 張成沢粛清以降、「韓国、米国、日本、西欧の外交官、軍幹部、学者、メディアでは中国の対北朝鮮政策の変化を予想」し、さらに「中国は韓半島の安定より、『北朝鮮の非核化』を優先する方向で政策を修正している」と報じられた。

 同誌は、「甚だしいのは、中国が韓国主導の統一を受け入れる方向へ政策を変更するという報道まで出ている」と伝える。確かに、「北朝鮮に対する中国人の失望感を超えた嫌悪感はますます大きくなった」と同誌も強調する。

 しかし、中国は本当に対北朝鮮政策を変更したのかといえば、同誌の分析は否定的で、その理由として、北朝鮮の地政学的位置に注目した。同誌はまず歴史をひもといてみせる。

 中国は「文禄の役」(1592年)、「韓国動乱」(1950年)、そして「金正日死去」(2011年)のとき、いずれも自国が難局にありながらも、「躊躇(ちゅうちょ)せず大軍を派兵してきた」と指摘する。文禄の役では明軍が、韓国動乱では人民解放軍が、さらに金正日死去のときは「43万の瀋陽軍区所属の迅速対応部隊」が北朝鮮内、あるいは中朝国境に投入された。

 中国が歴史的にこうした敏感で強い反応を示す理由を同誌は、北朝鮮が中国の「喉」の位置を占めるからだと指摘する。

 北朝鮮は「北京と天津を含む首都圏の安全保障を確保する手段であり、米国、日本など“海洋勢力”を攻撃できる踏み台である。その反面、ここを失えば、東北地方と渤海湾、さらに首都圏が脅威にさらされることになり、(北朝鮮は)喉のような重要な位置を占めている」との説明だ。

 別の見方をすれば、韓半島が目的なのではない。“海洋勢力”すなわち日本と米国と直接対峙(たいじ)するような状況になることを避けるため、自身の犠牲もいとわず、首都圏防衛に直結する半島の死守に出ざるを得ないというわけである。

 米国にとって韓国が「喪失しても仕方ない位置にある」のとは、相当に戦略的価値が違う。「たとえ米国がグアム以東に後退しても、“宿敵”日本が持ちこたえている限り、決して放棄できない死活の地」が中国にとっての北朝鮮なのである。

 同誌は、「したがって、南北統一は中国をして、安保の不安を感じさせなくした後でなければ、実現できないものと判断される」と述べている。

 韓国がしきりに対中外交に力を入れる理由がここにある。南北を統一しようとすれば、「中国の懸念」を取り払わなければならず、そのためには、米韓軍事同盟、日本との深い経済的結びつきが“障害”にさえなりうる―という、いわゆる「コリアパラドクス」を抱えているのだ。

 しかも、覇権主義を強める中国と、「再武装を追及する日本」に挟まれて、「燕雀処堂」(火事が迫る藁葺(わらぶ)き小屋の軒にぶら下がったツバメの巣)の韓国政府が、「解決できない北核問題を『まず解決しなくては、一歩も前に進まない』という政策がはたして正しいことなのか」と朴政府の対北政策に疑問を呈する。

 いずれにせよ、「たとえ米国が退いても、日本が存在する限り、中国は北朝鮮を手放さない」という分析は現状をよく分析していて、評価できる。しかし、この考えをとるのは、南北統一問題の出口を埋めてしまうようなものだ。日本がカリフォルニア沖に移動するのと、中国が日米韓と同じく自由民主主義・資本主義の国になるのと、どちらが可能かを考えれば、答えは自ずと明らかになり、韓国政府としてもとるべき政策が出てくると思うのだが。

 編集委員 岩崎 哲