韓国で17年政権交代へ野党統合

民主党と安哲秀グループ

 韓国第1野党の民主党と独自の新党結成を進めていた無所属・安哲秀議員のグループが2017年大統領選挙での政権交代を目指し、統合して新たな政党をつくることで合意した。民主党は人気の高い安議員の抱き込みに成功したことで、6月の統一地方選を皮切りに今後の選挙で与党セヌリ党に互角の勝負を挑めると意気込んでいる。(ソウル・上田勇実)

「新しい政治」色あせも

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2日、国会で新党結成の記者会見に臨み、握手する金ハンギル民主党代表(右)と安哲秀議員!韓国紙セゲイルボ提供

 民主党の金ハンギル代表(党首)と安議員は2日の記者会見で「新しい政治に向けた新党結成により統合を推進」することで合意、これを土台に「17年政権交代を実現する」と明らかにした。今月末をめどに新党結成作業を終え、6月の地方選に臨む考えだ。

 両者の統合は、与党との支持率の差を埋められず、安グループの独自新党で野党支持票が分散してしまうことに悩んでいた金代表の苦肉の策。既存政治とは一線を画し、12年の大統領選出馬当時から「新しい政治」にこだわり続けてきた安議員を口説くため、吸収という形は避け、双方の対等持ち分を原則とする新党を結成することにした。

 新党結成をぶち上げたはいいものの、人材難や組織力不足に直面していた安議員にしても民主党と手を組めばこれらの課題をある程度クリアできると踏んだ可能性がある。またパートナーが党内では中道派といわれる金代表だったから統合に踏み切れたという面もある。これが親北朝鮮政策などバリバリの左派路線を丸出しにしてきた盧武鉉元大統領に近い「親盧グループ」だったら二の足を踏んでいたかもしれない。

 統合発表直後の各種世論調査を見ると、政党支持率で統合新党は40%ちょっとのセヌリ党をわずか数%ポイント差まで追い上げるなど、早くもその効果が表れている。先回の大統領選で安氏との候補一本化に成功した民主党の文在寅議員が、セヌリ党の朴槿恵候補(当時)を猛追したあの“安効果”が再現されるかのようだ。

 だが、その一方で安議員が目指してきた「新しい政治」が色あせる公算も大きくなっている。安議員はセヌリ党と並んで民主党を「既得権勢力」と呼び、民主党との選挙協力や統合などを「政治工作」「敗北主義」などとして否定してきた。それが一夜にして態度を百八十度変え、民主党と一緒に「新しい政治」を追求するというのだから「旧政治に対する新政治の投降と呼んでもおかしくない」(韓国紙)状況だ。

 安議員の素人くささや純真無垢(むく)なところに期待をかけてきた側近や支持者からも反発の声が上がっている。今回の発表は内部で十分な合意を得てからのものではなかったようで、安議員の豹変(ひょうへん)ぶりに驚いたり、裏切られた思いを抱いたりと混乱気味だ。中には「民主党が嫌で安グループに来たのに…」と嘆いている人もいる。

 統合新党発表で、今後の韓国の政局は右派のセヌリ党、左派の統合新党による一騎打ちの構図がより鮮明になりそうだが、セヌリ党は朴大統領が経済民主化や福祉などに軸足を移したことで、また統合新党は昨年、従北問題が発覚した統合進歩党議員の事件や北朝鮮の軍事挑発、側近粛清などの影響で、いずれも強硬路線を取りづらくなっており、中道寄りの政策をアピールすることも予想される。