李俊錫氏の登場と政界の変化
2030世代の老害への反発
韓国大統領選の幕が開け、与野党ともに候補者が名乗りを上げて、事実上、大統領選がスタートしている。大統領の被選挙権は40歳からだ。つまりそれ以下では立候補できないのだが、36歳の若者が注目を集めている。保守野党「国民の力」の代表に選出された李(イ)俊錫(ジュンソク)氏である。
この李氏に焦点を当てた企画が月刊中央(7月号)のカバーストリー「李俊錫現象」だ。同氏が支持を受けた分析と、今後の課題を挙げている。
韓国では今「若者を掴(つか)め」が選挙のキーワードである。4月に行われたソウルと釜山の市長選で文(ムン)在寅(ジェイン)政権与党「共に民主党」は惨敗を喫した。両者とも現職市長がセクハラで追及され自死したり、職を追われたりした後の補選だった。進歩政党の体たらくが審判されたのだが、それを主導したのが20代30代の若者層である。
「2030世代」という。これまでその多くは進歩政党、文大統領の「鉄板支持層」だったが、市長選で見せた投票行動は与党を驚かせるに十分だった。まだ国会議員にもなっていない李氏の代表選出は、この若者層を取り込もうとしたとの分析が多い。
若者層には文政権が「国を危機に追いやった」との批判がある。外交、経済、雇用、不動産政策の失敗、女性割当制など、さらに曺国(チョグク)前法相の辞任をはじめとする政権の不正・疑惑に対する怒りだ。
しかし、文政権の「進歩的理念偏重」政策が否定されたことで、若者が保守回帰していると見るのは勘違いだと同誌は指摘する。彼らが怒りをぶつけたのは左派政策ということではなく、「私がやればロマンス、他人がやれば不倫」のご都合主義、政権中枢を牛耳る「86世代」(日本で言う団塊の世代)への反発、「運動圏」(学生運動)主導勢力の独裁・パワハラ組織運営体質への批判、これらが4月補選の結果となって表れた。それを受け止めなければならない、というわけだ。
だから、単に若い党代表を据えたからといって、支持を受けられるわけではない。例え保守野党が政権を取っても、新鮮さを失い、汝矣島(ヨイド)(日本で言う永田町)の論理に染まって、旧態依然とした政策を行う、いわゆる「老害」を繰り返せば、「さっと支持を回してしまう」と警告する。
従って李代表の課題は明確だ。「嶺南(慶尚道、伝統保守)地域政党、金持ち、既得権政党、老害政党、といった否定的イメージ脱皮のための刷新」が求められている。ここに検事総長を辞任した尹(ユン)錫悦(ソンニョル)氏の合流をどう導くか。李氏の登場と課題がよくまとまっている。
編集委員 岩崎 哲