精度に難ある世論調査
候補者選びで不服事例続出
世論調査は実施業者によって出てくる数字が著しく違うことがある。違いの原因はサンプル集団の偏りがほとんどだ。しかし、その結果が人生を大きく左右するとなれば、正確性が問われる。
韓国は総選挙を迎え、党内候補者選定過程で世論調査が頻繁に利用されるが、そこで信頼性問題が浮上してきている。新東亜4月号が、党内の候補者選びで「不服事例が続出している」と伝えている。その原因が世論調査なのだ。
韓国の調査はARS(自動応答システム)と電話面接調査がほとんど。電話面接では番号の抽出に課題があり、固定電話では高齢者が多く、携帯電話では若い世代が多くなること、さらに番号抽出に費用と時間がかかることで敬遠される傾向がある。
そして、調査方法それ自体に問題があるのに加え、業者の“忖度(そんたく)”や逆に「悪意のある歪曲(わいきょく)や操作」が入り込む余地があり、信頼性が著しく棄損されているのだ。
ある候補者は「投票で勝って、開票で負けた」として訴訟を起こした。つまり、世論調査では優勢だったのに、実際の選出投票では反対の結果となったということだ。「業者が公認に介入した」と主張しているが、ほとんど言い掛かりに近い。
また18カ所もの選挙区では、与党共に民主党の候補が、「党内候補選で負けたが党の決定に従わず、再審査を要求した」という。決定の主な根拠となった世論調査の結果を不服とし、自身が優勢だと信じての要求だ。
確かに韓国の世論調査の“精度”には疑問符が付く。4年前の総選挙時、世論調査に基づく議席予測結果が大きく外れたと同誌は伝える。当時与党のセヌリ党が優勢で第1党予想だったが、結果は、共に民主党が予想とは40議席も違い、第1党になった。
こうした事態を受けて、世論調査審議基準の強化、携帯電話仮想番号が導入された。既に29件が告発や警告、操作、過怠金の措置を受けているという。
「この際、世論調査に対する認識転換が必要だ」と指摘するのは韓国外大の金春植(キムチュンシク)教授だ。「当選者予測を目的とする世論調査は実効性がない」として、「特定政策や民心の把握」に限定すべきだと提案する。
さらに尹錫圭(ユンソッキュ)元与党議員は、「世論調査は選挙ではないので、政党候補を決めるときは誰でも参加できる現場投票式の党内予備選が最善だ」と主張する。しごくまともな意見だ。
編集委員 岩崎 哲





