バチカンと「言論の自由」


地球だより
 ウィーンに本部を持つ国際新聞編集者協会(IPI)は27日、ローマ・カトリック教会総本山バチカン市国が2人のイタリア人ジャーナリストを起訴したことに対し、「言論の自由」を順守し、裁判を中止するように要請した。2人のジャーナリストはバチカン内部から入手した文書に基づき、バチカン内の腐敗、ミスマネジメントを記述した著書を出版したばかりだ。

 入手先は、法王庁諸行政部門およびその財務を管理する「聖座財務部」の次長だったスペイン教会のルシオ・アンヘル・バジェホ・バルダ神父(54)らだ。機密文書の中には、タルチジオ・ベルトーネ枢機卿(前国務長官)の腐敗(巨額な住居費など)、宗教事業協会(バチカン銀行=IOR)の疑惑口座、バチカンが運営する小児病院「バンビーノ・ジェズ」の不正運営などが記述されていたという。

 バチカン側は「信頼への裏切り行為だ」としてバルダ神父らを厳しく批判するとともに、2人のジャーナリストを機密文書を不法な方法で入手したと批判している。裁判で有罪判決となった場合、8年の禁錮刑が予想されている。

 バチカンでは前法王べネディクト16世在位中の2012年、機密文書の流出事件(通称バチリークス)が生じたことがある。法王の執事(当時)パオロ・ガブリエレ被告(46)=当時=がべネディクト16世の執務室や法王の私設秘書、ゲオルグ・ゲンスヴァイン氏の部屋から法王宛の個人書簡や内部文書などを盗み出し、ジャーナリストに流した事件だ。

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