大事にしたい「双子の国」

日韓国交正常化50年 識者に聞く(7)

ソウル市立大学教授 鄭在貞氏(下)

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 ――先日、朴政権になって初めて外相が訪日し、50周年記念行事には両国首脳がそれぞれの国で出席した。ただ、関係改善に対しては慎重な見方も多い。

 関係改善の兆しは見えたと言える。ただ、一挙に改善に向かうには、例えば日本側が朴槿恵政権が要求する慰安婦問題で何かしら善処しなければ難しいことに変わりはない。

 ――世論調査では日韓首脳会談を行うべきだとの声が多い。

 安倍晋三政権(第2次)誕生後、韓国人の対日感情は悪化したが、その一方で韓日関係を改善させなければならないという要求は非常に強く、その手段として首脳会談を考えている人が多い。首脳同士の相互理解と対話が不足していることが、今のような関係悪化を招いていると考えている。 隣国同士の首脳が会談できずにいるというのは、あってはならないことだ。

 ――日韓・韓日歴史共同研究委員会のメンバーとして活動された。成果はあったか。

 日韓の歴史学者が共同で研究したということ、また懸案事項をめぐり討論できたということが成果だろう。韓国側はその後、この共同研究を踏まえ、歴史教科書の日本に関する記述が多少ソフトになった。

 だが、今は当時に比べお互い会ってもぎこちなくなった。特に日本側には、関係改善や相互理解に向け何かをやろうとか、われわれ学者たちがイニシアチブを握ろうといった意思が弱くなった印象を受ける。

 ――政治やマスコミが日韓関係悪化を煽(あお)っているとの指摘もある。

 政治家たちは国民世論を口実に国内の政治基盤を固めようとし、しばしばナショナリズム(国粋主義)を煽る発言をする。韓国ではその格好の材料が「反日」であり、日本の場合は「嫌韓」がその一つだろう。

 日本では韓国を話題にしながら韓国を無視したり、「韓国=悪、日本=善」という構図で語るのが一番手っ取り早い。韓国も日本による過去の植民地統治、侵略に関することを話題にすれば韓国人のアイデンティティーを刺激する。

 マスコミも同じで、お互いにそういう面ばかり強調して報道し、それがまた受けるのでさらに報道を繰り返すといった具合にエスカレートしている。日本で今、「韓国と仲良くしよう」と主張したら、たちまちSNSなどを通じて非難されるのが現状だ。

 政治の扇動とマスコミの商業至上主義が相まって韓日関係悪化を加速させることに力を貸す結果となっている。

 ――是正するにはどうすればいいか。

 両国の歴史的経緯などを見ても分かるように相手が自国に与える影響は計り知れないほど大きかった。大陸から文化が韓半島を経由して日本に伝えられたし、日本の植民地統治時代は韓国にとって暴力と野望が支配する時代だったが、それでも日本から文明が入ってきた。

 米国の文明史学者ジャレド・ダイアモンドはかつて「韓日は乳幼児期を共に過ごした双子の国」と語ったように第三者には「双子の国」に見える のだろう。こうしたことも大事に考える必要があるのではないだろうか。

(聞き手=ソウル・上田勇実)

=終わり=