日韓連携はアジア平和の礎

日韓国交正常化50年 識者に聞く(2)

衛藤征士郎衆議院議員(下)

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 ――交流を通して慰安婦問題や竹島問題、歴史認識など様々な懸案の解決策を見いだせるのか。

 できると思うが、日本と韓国の政治風土が違う。日本は議院内閣制だが、韓国は大統領選挙で選ばれたトップなので、どうしてもトップの意向というものが、政治経済全ての分野に影響を及ぼす。日本はそうではない。与党と野党があり、過半数を取った党の代表が、国会で互選されて同意があれば総理になっていく。だから、いろいろな意見があって、それが韓国側に対しても反映されていく。関係者も自由に動ける。

 韓国はそうはいかない。いつもトップの大統領はどのようなお考えなんだろう、という見方をしている面がこちらからも見えてくる。だから、それを乗り越えてほしい。

 ――慰安婦問題について朴槿恵大統領は最近、「最終段階に来ている」と語ったが。

 朴槿恵大統領は、慰安婦に対する日本側の理解と彼女たちの傷を癒やすために努力をしてほしいと発言されている。それは我々も非常に重く受け止めている。朴大統領はまた、日韓の新未来に向けて新しい出発、共に行動しましょうとも語っている。

 朴大統領の発言を実現するためには、どちらか一方だけでなく、日韓がお互いに責任を持たなければならない。お互いに責任を共有して、同じ道に立ち、同じ新未来に向けて、同じ心で進むことが大事だ。同心同進。そういう意図、目的を持って我々(サッカー外交推進議連)は今回訪韓した。

 ――サッカー外交推進議連のルーツは2002年ワールドカップ開催推進議連だ。日韓共催の困難をどう乗り越えたのか。

 幸いなことに2002年ワールドカップ(以下、W杯)は日韓共催になった。当時、世界中の国々が招致のために頑張ったが、最後は日本と韓国の争いとなった。私も招致議連の幹事長兼事務総長として、会長の宮沢喜一元総理とともに、スイス・チューリヒの幹部会議に参加していたが、いよいよ明日は理事たちの決選投票だという日の夕刻4時か5時。そんな時間帯に韓国側から共催はどうかという提案があった。

 部屋には宮沢先生と私、国会議員は2人だけ。あとは日本サッカー協会の長沼健会長、岡野俊一郎副会長、川淵三郎チェアマン、小倉純二専務理事(肩書はいずれも当時)、それから釜本邦茂氏の7名。さあどうするか、本当に共催するか単独でいくか。こういう時に、宮沢会長が決断した。日韓共催でいこう、これも選択肢の一つだと。

 私も宮沢会長の提言に賛成しますと。一瞬、シーンとなったが、「よし、じゃあ、日韓共催で行こう」ということで、共催が決まった。

 日韓両国の第一歩、非常に大きな第一歩を我々は踏み出した。それを一つの契機にして始まったのが、国会議員の親善サッカーだ。

 ――やっと外相会談まで漕ぎ着けたが、首脳会談への展望は。

 できるだけ早く、日韓両首脳の会談が実現することを期待している。朴大統領も「ツートラック」に言及されたし、今年は日韓国交正常化50年という歴史的な節目の年なので、なおさらそうあってほしい。

 アジアの国々も日韓両国が常に連携し、協調して、同じ方向に向かって進むことが、北東アジア、さらにはアジアの安定と平和に大きく貢献すると皆思っている。だから日韓両国は北東アジアあるいはアジアの平和と安定の大きな礎になる。その役割を担わなければならないし、その重い責任を果たさなければならない。特に国会議員がそういう意識、責任感を持って努力すべきだ。

(聞き手=政治部長代理・武田滋樹)