「日本捨て中国接近」は誤解

日韓国交正常化50年 識者に聞く(6)

ソウル市立大学教授 鄭在貞氏(上)

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 チョン・ジェジョン 1951年生まれ。忠清南道出身。74年ソウル大学歴史教育学科卒。東京大学大学院に留学。94年から現職。 2003年から始まった日韓・韓日歴史共同研究委員会のメンバー。09年~12年に北東アジア歴史財団の第2代理事長。

 ――ここ数年の日韓関係悪化の原因はどこにあると思うか。

 歴史認識問題、独島(竹島の韓国名)をめぐる葛藤や対立などが爆発してしまった。本来これらの問題は日韓両国が管理してきたものなのに、管理の責任者たる首脳がむしろ先頭に立って争うので、国民レベルにまで影響を与え、悪化してしまっている。

 もう一つは、日韓関係が以前のいわゆる垂直関係からより水平関係に近くなったことが挙げられる。「失われた20年」で日本には寛大さがなくなっていき、一方の韓国側は日本に対し要求するものは要求するという姿勢を見せるので、これに日本が反発しているという側面もあるのではないか。

 ――韓国の反日感情よりも近年は日本の嫌韓感情の方が目立つようになった。嫌韓感情を和らげるために韓国側ができることは何か。

 嫌韓感情を抱くようになった原因を見ると、韓国に対する誤解に基づいている場合が少なくない。例えば「韓国が日本を捨て中国に接近してい る」というのもその一つ。実際にはそんなことはない。韓国が中国を重視しているのは確かであり、そう考えて当然だ。ただ、日本を捨てて中国と親密になるなんてあり得ない。中国は体制も理念も違う国。どうやってくっつくことなどできるというのか。われわれは、どこまでも米国と日本が重要な同質国家だという認識を持っている。

 ただ、韓国という国が生きていくためには中国と対立するわけにはいかないということだ。

 ――誤解を解くにはどうしたらいいと思うか。

 日本人が韓国を悪く思う理由について「韓国の真意はこうだ」と正直に伝えることで日本側の誤解を解く必要がある。韓国が日本に対し「謝れ、 補償しろ」と繰り返し要求することに日本側は疲労感を覚えているから、韓国は日本がこれまでにやってきたことに対し、評価すべきは評価しなければならないだろう。

 そういう意味で、朴槿恵大統領が民族衣裳の韓服を着て日本を訪問し、敗戦後に日本が歩んできた平和と繁栄の歴史を高く評価したら誤解はある程度解かれるかもしれない。東京で天皇陛下に拝謁し、安倍晋三首相とも会談する。また新幹線に乗って大阪へ行き、在日韓国人たちを激励する一 方、京都へ行って神社仏閣を訪れたら、日本人の心情も大分和らぐのではないか。

 ――日本側がすべきことは。

 日本も朴大統領が切実に願う慰安婦問題で解決方法を示し、早く処理して残りの歴史認識問題などすぐに解決できないものは歴史学者たちに任せる。韓日両国の歴史学者たちに10年なら10年という時間を与え、一緒に研究させればいい。

 今年は国交正常化50年だ。振り返れば様々な関係悪化の試練に直面しながらそれらを克服し、結局は両国双方にとってプラスになる関係を築いてきた。両国には良好な関係を保つノウハウと知恵がある。この大きな節目に次の50年を展望する韓日の大きなプロジェクトを推進していくのもいい。

(聞き手=ソウル・上田勇実)