交流テーブル作りから

日韓国交正常化50年 識者に聞く(1)

衛藤征士郎衆議院議員(上)

 日韓国交正常化を実現した日韓基本条約が調印されて、きょうで50周年を迎える。この50年間の両国の目覚ましい発展とは裏腹に、両国関係はかつてなく冷え込み、一部では感情的対立も起きている。関係改善の糸口はあるのか、両国の有識者に聞いた。

300

 えとう・せいしろう 1941年生まれ。早稲田大学卒業。同大学院政治学研究科で国際政治専修。大分県を基盤とし71年、玖珠町長(2期)、77年、参議院議員(1期)、83年から衆議院議員に11期連続当選。国会(衆院)では予算委員長、副議長、政府では防衛庁長官、外務副大臣など歴任。現在、自民党の外交・経済連携本部長。日韓議員連盟、サッカー外交推進議員連盟など超党派議連で活発に活動を続ける。著書に『一院制国会が日本を再生する』(悠雲舎)など。

 ――今月13日、衛藤議員が会長を務めるサッカー外交推進議連が音頭を取って、9年ぶりに第8回の日韓国会議員親善サッカーがソウルで開催された。

 8年間のブランクがあったが、今年は日韓国交正常化50周年になる節目の時なのでぜひ、従前通り、国会議員による親善交流のサッカー大会をやりましょうと、私の方から韓日友好議員連盟の幹部に申し入れた。今年1月だ。

 大きな節目にふさわしい未来志向で意義のあるセレモニーにしたい。もう一つ、日韓の両国首脳が早く首脳会談を行ってほしい。そういう思いもあって6月22日の前にやりましょうとなった。

 ――韓国側も了承したのか。

 もちろん了承した。本来なら、今回は韓国側が日本に来る番だったが、特別な事情でキャンセルされないように日本側が訪韓することにした。

 韓国でマーズ(=MERS。中東呼吸器症候群)の問題が出てきた。普通だったら、そういう時期なのでまた延期になる。しかし、我々の訪韓が韓国側に迷惑をかけるなら延期するが、という話をすると、先方は大統領府とも話して、こういう時ではあるが、ぜひ、親善交流のサッカーの試合をやりましょうということになり、私たちも胸を撫(な)で下ろした。

 ――困難を押して開催した成果はあったか。

 実際、非常にいい試合になった。韓国側の国会議員サッカー連盟の鄭柄国会長はもちろん、鄭義和国会議長や韓日友好議員連盟の徐清源会長、与党セヌリ党の金武星代表など、二十数名が参加した。

 試合後の懇親会も今までにない和やかな、和気藹々(あいあい)の雰囲気だった。そこで、今年は国交正常化50年の節目なので親善サッカーを2回開催しましょうと提案し、今年の秋、東京で行うことで合意した。韓国の国会議長や韓日議員連盟の会長、韓国サッカー議員連盟の会長も幹部も皆、必ず出席しますと言っていた。

 サッカーは世界の共通言語であり、対話を進める主役、牽引(けんいん)車、推進者だ。サッカーは国際平和のゴールでもある。これは、ある意味では、日韓新時代のキックオフ、新しいスタートになったと思っている。

 ――ちょうど6月22日に合わせて韓国の尹炳世外相が21日、来日した。

 いい展開だと思っている。我々の親善試合に相呼応するように、朴槿恵大統領も米紙との会談で「韓日国交正常化50周年が意味ある年になることを期待する」と発言された。

 ――とはいえ、日韓の首脳会談が未だに行われていないのは異例だ。

 まず大事なことは、政府にしろ、政治家にしろ、一般の国民にしろ、まず交流することだ。まずテーブルに着く。もっと言えば、関係者が着くテーブルを作らなければならない。

 韓国と日本にそれぞれ分かれていて、いろいろ意見を出し合ってもダメ。早く双方とも同じテーブルに着くべきだ。そういう意味で安倍晋三総理が、対話のドアはいつもオープンですよというのは当然のことだ。総理も官房長官も言っているが、いろいろ条件を付した上でテーブルに着く首脳会談ではなくて、そういうものを抜きにして、とにかく首脳が会って、率直に意見交換をして、そして一つずつ問題を乗り越えていくことが大事だ。

(聞き手=政治部長代理・武田滋樹)