放射線医学研、ぬれタオルで放射線が4割減


宇宙で実験、火星探査に応用も

放射線医学研、ぬれタオルで放射線が4割減

国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が浴びる放射線量を減らすため、水を含んだウエットタオルを並べて作った遮蔽(しゃへい)材を、地上で再現したモデル(放射線医学総合研究所提供)

 国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士は1日に0・5~1ミリシーベルト被ばくするが、放射線医学総合研究所(千葉市)などは27日、ISSにあるウエットタオルで作った遮蔽(しゃへい)材を使った実験で、放射線量を4割近く低減できたと発表した。将来の火星探査では、飛行士の被ばく対策が課題の一つ。実験は有効な遮蔽材の開発に役立ちそうだ。

 ISSでは1日に地上の100倍以上の放射線を浴びるが、ロケットの輸送量には限りがあり、大きな遮蔽材を作るのは難しい。有人火星飛行を目指す米航空宇宙局(NASA)は5月、往復だけで生涯許容限度に近い被ばくをするとの研究結果を公表している。

 放医研の小平聡研究員らは、ロシアなどの研究機関と協力。遮蔽効果に優れる水を多量に含み、ISSに大量にあるウエットタオルに着目した。ロシア人飛行士がISSのロシアモジュール内でタオルの入った包みを積み重ね、幅約70センチ、高さ約150センチの遮蔽材を作った。

 2010年6月から約半年間、放射線量を測定したところ、遮蔽材がない場所が1日0・96ミリシーベルトだったのに対し、ある場所は同0・59ミリシーベルトで約37%減った。

 小平研究員は「改良を進め、飛行士の防護につなげたい。探査期間は被ばく線量で制限されるので、より長期に安全に探査できるようになる」と話している。