映画「少女は自転車にのって」


アラブの女性監督が撮った奇跡の一作

映画「少女は自転車にのって」

戒律が厳しい社会で生きるワジダ(ワアド・ムハンマド)

 イスラム教国のサウジアラビアでは、宗教上の理由で禁止されていることが多くある。その一つが映画館を造れないこと。そんな環境の中で映画を製作し、ヴェネチア国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などで高く評価され、2014年アカデミー賞外国語映画賞サウジ代表として選ばれたのが「少女は自転車にのって」だ。

 サウジ初の女性監督ハイファ・アル=マンスールがメガホンを取っている。

 主人公は小学生の少女ワジダ。自転車に乗りたいというささやかな夢の前に戒律という大きな壁が立ちはだかる。それを乗り越えようと奮闘するハートフルヒューマン作品だ。

 サウジ政府から、首都リヤドでの撮影許可を取り付けたものの、男性が働く現場のなかに女性が監督として活動するのはご法度。それだけに撮影は慎重に進められ、監督は車の中から指示を出したという。

 作品を通して垣間見られるのは、監督自身の人生の物語だ。

 主人公ワジダには、クチコミなどで集められた50人以上の少女から、リヤド生まれの12歳、ワアド・ムハンマドが選ばれた。

 オーディションへは頭にヘッドフォン、ジーンズ姿、両手にタトゥーという身なりでやってきた。監督は彼女の声とその姿のインパクトで決めたという。

 母親役を伝統社会に挑み続ける女優リーム・アブドゥラが演じ、長編作品への初出演となった。

 2月7日まで岩波ホールで公開中。全国順次公開。