世界初、力感じながら遠隔操作
慶応大が開発、リハビリや産業ロボに応用へ
離れた場所にあるロボットの手を無線で動かして物をつかんだり押したりする際、ロボットの手が受ける力を同時に感じながら操作できるシステムが開発された。慶応大理工学部の大西公平教授らが基本的な仕組みを実証する装置を試作し、20日発表した。
大西教授は「世界初の成果。脳梗塞などで手を思うように動かせなくなった患者のリハビリに使えば、理学療法士が離れた場所から手や腕の動きを助けることができる」と話した。人間が働くには厳しい環境で、ロボットが微妙な手作業を行うのにも応用できる。力の感覚は大きくしたり、小さくしたりできるという。
ロボットの手などが物を押したりする力は加速度センサーで捉え、無線で操作者が動かすレバーなどに伝えられる。操作者はその力を感じながら次の操作ができる。時間差を感じないためには、力の情報が無線で往復する時間を100分の1秒程度にする必要があり、無線を送信と受信の2回線使うほか、情報処理を工夫した。
試作装置「フォース・トランシーバー」は長さ約60センチ、重さ7・5キロの長方形の箱が2個1組あり、上面にそれぞれ動く部品が付いている。操作者が手元の箱の部品を動かし、遠くの箱の部品に取り付けたフォークでリンゴを刺す実験では、フォークが受ける力を感じることができた。無線が届く距離は、将来は300~500メートル程度にできるという。