大阪天満宮で受験生に「すべらんうどん」
身障者も食べやすく、麺に切り込み引っ掛かる
入試シーズンを迎え、大阪市北区の大阪天満宮で食べられる「すべらんうどん」が受験生の人気を集めている。麺に縦長の切り込みがあり、箸を通せば滑らない。もともとは目が不自由なオーナー岡道信さん(57)が、身体障害者も食べやすいようにと考案したが、試験に落ちないとの験担ぎで評判になった。
学問の神様、菅原道真を祭る大阪天満宮。すべらんうどんは、境内奥にある池のほとりの店で売られている。息子の大学合格祈願に来た大阪府泉南市の夫婦は「おいしいし、いい願掛けになります」と喜んだ。
麺は平たく短め。切り込みは数センチで、箸を通そうと意識しなくても引っ掛かる。キツネや釜玉などメニューは多彩で、値段もお手頃。
岡さんは大学4年のときに突然、視力が著しく低下する病気になった。仲間と鍋を囲んだ際、締めのうどんが食べづらかった。手が不自由な人もうまくつかめない。「皆がうどんをおいしく味わうために、何とかしたい」と思案に暮れた。
機械での製麺が前提。イカリングのような輪を考えたが、機械では作れなかった。切符のような長方形に穴を開けたらと思い付き、ガムのように縦長にしてようやくうまくいった。「イカリング、切符、ガムと2年ほど試行錯誤した。多くの人の協力があったからこそで、僕一人ではできなかった」という。
縁あって大阪天満宮で販売を始め10年以上。店を切り盛りする岡さんの叔母(71)は、受験生を「これを食べたら、あとは努力やで」と励まし、「すべらん」と書かれたシールを手渡す。「試験日にこれを見る余裕があれば大丈夫」。
受験生だけではない。上方落語の常設寄席、天満天神繁昌亭が近くにあり、若手芸人らも「ネタが滑らない(受ける)ように」とやって来る。
メニューのうち、「喜ぶうどん」は昆布入り。「時うどん」は、調子のいい客がそばのお代をごまかす古典落語「時そば」をもじり、ごまのかすが隠し味だ。岡さんは「多くの人がいろんな幸せを感じてくれたら」と願っている。