福島復興で芸術家ら「アートで心通わせ」
静岡市葵区の「金座ボタニカ」でトークセッション
芸術活動を通して東日本大震災の記憶を伝える「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」(実行委員会・福島県立博物館など)の一環となるトークセッションが10日、静岡市葵区の「金座ボタニカ」で開かれ、市民ら約50人が参加した。
浜松市在住のアーティスト乾久子さん(57)は震災直後、「アートは何もできない」と無力感を感じたという。乾さんは、福島の小学校で、くじ引きで当たったお題を絵に描き合う交流活動を行った体験を紹介。「福島の子供たちは、静岡の子供たちよりも伸び伸びとやっていて思いがけなかった」と振り返った。
静岡市のデザイナー利根川初美さん(48)は「震災では子供だけでなく大人も揺らいでしまう。子供を持つ親として、歌や絵で心を通わせる方法を知っておくのは大事だ」と話した。
静岡大でアートマネジマントを教える白井嘉尚教授(62)は「すぐ何かが変わるわけではないが、(表現活動を)続けていくことが大事だ」と指摘。赤坂憲雄福島県立博物館長(62)は「(東京電力福島第1原発事故で)見えない放射性物質が子供たちの言葉を侵している。そういうとき、深刻な現実を柔らかく表現し、人と人とをつなげるアートは大きな力を持つ」と述べた。
会場では、写真や絵画などプロジェクトの4年間の成果が22日まで展示され、その後は浜松市や京都市を巡回する予定。