映画「ブリッジ・オブ・スパイ」


冷戦時代の奇跡の物語

映画「ブリッジ・オブ・スパイ」

平和の鍵を握っている弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)=©2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

 1957年、ニューヨークでソ連のスパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)が逮捕された。FBIの厳しい尋問を受けるが協力を拒否。裁判を待つ間、連邦刑務所に拘留された。

 国選弁護人として選ばれたのはジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)だった。ニュルンベルク裁判で検察官を務めた経験もあるが、国際政治や謀略からは遠ざかっている。敵国の人間を弁護することに躊躇(ちゅうちょ)するが、「どんな人間にも等しく公平な裁判を受ける権利がある」という正義の原則を貫く。

 裁判が進められる過程で、ドノヴァンとアベルとの間には、互いへの理解と尊敬が芽生えていった。

 アベルの祖国に対する忠誠心と愛は、自分たちが祖国に寄せるものと変わらないものと思われたからだ。熱意にあふれ、かつ冷静なドノヴァンの弁護は、死刑確実だったアベルに懲役30年という結果をもたらした。

 5年後、ドノヴァンとアベルの運命が交錯する日がやってくる。アメリカの偵察機U-2が偵察中にソ連上空で撃墜されたのだ。ソ連に拘束されたパイロット、フランシス・ゲイリー・パワーズ(オースティン・ストウェル)は10年の刑を言い渡される。

 重要機密が漏れることを恐れたCIAは、密(ひそ)かにパワーズとアベルの交換を画策。水面下での交渉役に白羽の矢を立てられたのがドノヴァンだった。冷戦時代の奇跡の物語だ。(森 啓造)