「一人芝居」の上演でいじめの撲滅を訴える
元小学校教師の福永宅司さん、「家庭で話し合って」
「一人芝居」の上演を通じて、いじめ撲滅を訴えている元小学校教師の男性がいる。福岡市の福永宅司さん(56)で、いじめが原因とみられる岩手県矢巾町の中2男子の自殺をきっかけに、緊急公演も実施。来場者に「内容を持ち帰り、家庭で話し合ってみてほしい」と呼び掛けた。
教師時代から人権教育などに携わってきた福永さんは、演劇クラブ担当の経験などを生かし、教育に一人芝居を取り入れた。体一つでどこででも演じられるのが魅力という。
2004年に退職し、学習塾を経営する傍ら、全国各地の小中学校などで年間150回前後の一人芝居を上演してきた。教育問題をテーマにした作品が多く、レパートリーは幅広い。
反響が大きいのは、オリジナル作品の「君をいじめから守る」だ。中学校を舞台にしたいじめが、聴講生として授業に参加していた地域住民の働き掛けで解決に向かい、最後には生徒会を中心に学校全体が動きだすという内容。教員らへの取材などを基に作成した。07年の初演以来、世相を反映し細部を更新し続けている。
依頼を受けて上演するのが基本的な姿勢だが、矢巾町の問題を報道で知ると「いてもたってもいられなくなって」自主公演を決め、同作を福岡市内のホールで上演した。親子連れや教育関係者ら約170人が来場、食い入るように公演を見詰めた。終了後には福永さんに「改めていじめについて考えるようになった」などと感想を述べていた。
福永さんは「いじめを止めたいと思っていても、1人では仕返しが怖い。一人芝居を通じ、団結して立ち向かうことの素晴らしさを伝え、子供たちが自分の力を人のために役立てる経験を積む後押しができれば」と話した。