映画「バケモノの子」


ポスト“宮崎”・細田守監督の最新作

映画「バケモノの子」

暴れん坊の熊徹と、弟子になった九太(右)=©2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

 日本アニメ界の巨匠、宮崎駿監督が引退を表明し、ポスト宮崎を巡って注目を集めているのが細田守監督。「時をかける少女」「サマーウォーズ」を手掛けたのち、4年前に映像製作会社スタジオ地図を設立し「おおかみこどもの雨と雪」を発表した。その卓越した脚本と色彩・演出によって世界の映画祭でさまざまな賞を受賞してきた。
 現在公開中の「バケモノの子」は、その宮崎の淡い色彩を踏襲した、力強く優しさあふれる物語で多くの人々の心をひきつけている。

 交わるはずのない人間界とバケモノ界。バケモノ・熊徹は渋谷で、母親を亡くし親戚に引き取られることを拒否して家を飛び出した少年と出会う。興味を持った熊徹は少年をバケモノ界に連れてくる。少年は九太と名付けられ、熊徹の弟子になる。

 熊徹は凄腕(すごうで)だが、バケモノ界からは問題児扱いされて、天涯孤独の身。二人は反りが合わず、いがみ合いながらも日々成長していく。ところが逞(たくま)しい青年になった九太は、偶然に人間界に戻ってしまう。

 そこで出会ったのは高校生の楓(かえで)で、これまで知らなかった世界観、価値観を教えられ、自分がどこで生きるべきかを模索し始める。そんな矢先、人間とバケモノの二つの世界を巻き込んだ大事件が起きる。

 孤独な男たちの成長物語であり、親子について考えさせる作品だ。

 九太の少年期を宮﨑あおい、青年期を染谷将太。女子高生・楓に広瀬すず、熊徹を役所広司。その他、津川雅彦、大泉洋、リリー・フランキー、宮野真守らが声で出演。(佐野富成)