宇宙飛行士の油井さん、安全確認に「裏付け」
ロシア無人機事故で、交渉2カ月データ引き出す
国際宇宙ステーション(ISS)で約5カ月の長期滞在に臨む宇宙飛行士の油井亀美也さん(45)。当初打ち上げ予定だった5月27日から約2カ月の延期を経て、23日に出発する。既に発射基地のあるカザフスタン・バイコヌール宇宙基地に移動し、最終準備を進めている。
今年4月、ロシアのソユーズロケットによる無人補給船「プログレス」の打ち上げが失敗。同じソユーズでISSに向かう油井さんの打ち上げは約2カ月延期された。ロシア側はわずか1カ月余りで原因を特定したと発表し、「油井さんらに影響はない」と説明したが、宇宙航空研究開発機構は詳しいデータを要求。2カ月近い交渉を経て、裏付けとなるデータを引き出した。
有人ロケットを持たない日本は、宇宙飛行士の輸送を他国に頼るほかない。安全確保に必要な場合でも、技術の性格上、十分な情報を得られるとは限らない。
宇宙機構は4月の事故直後、H3ロケットの開発担当者らを加えた独自の検証チームを設置。公開情報などを基に、起こり得る事故シナリオの分析を重ねた。若田光一さん(51)らソユーズに搭乗経験のある宇宙飛行士からも意見を求めた。
ロシア側は6月初め、事故はソユーズロケットとプログレスとの組み合わせで生じる振動が原因とする報告書を公表。油井さんらが乗るソユーズ宇宙船では同様の事故は起きないと説明した。日本側は、独自の分析を基にデータを要求。ロシア側の技術者と直接やりとりを重ねた。
以前のロシアは「われわれを信じろ」という姿勢だったが、宇宙機構の三宅正純ISSプログラムマネジャーは「ロケット開発で得た知見で、必要なデータを具体的に要求したことが交渉につながった」と話す。その結果、ロシア側は事故時の加速度の変化などのデータの開示に応じた。
米国も民間企業が有人宇宙船の開発を進めており、日本人宇宙飛行士の搭乗も予想される。三宅さんは「今回の経験は、米国の民間宇宙船に乗る時にも生きてくる」と話している。