映画「ジヌよさらば」
世にも奇妙なコメディー
主人公のタケは生真面目な銀行マンだったが、お金で自ら命を絶つ人々を目の当たりにして、いつかしかお金恐怖症になり、お金に触ると失神してしまうようになる。ATMも自身の通帳も見ることができない。
そんな状態で学校も病院も警察もない、過疎化が進む「かむろば村」に移住する。目的はお金を「1円も使わずに生きていくこと」。100万円で購入したボロ家で自給自足の生活を始めた。
村人たちはそんなタケを奇妙な生き物を見るように眺めていた。村長の与三郎とその妻亜希子、女子高生の青葉、自他ともに認める村の”神様“なかぬっさん、スーパーあまののパート従業員いそ子、なかぬっさんの娘で旅館の女将(おかみ)奈津らは、いぶかりながらもタケを気遣う。
そんなある日、タケの貯金が600万円あることに面々は驚く。
クールな松田龍平がタケをユーモラスに演じ、村長の与三郎役の阿部サダヲが松田龍平とテンポよく掛け合う姿に笑みがこぼれる。漫才のコンビのような2人の掛け合いは必見だ。
なかぬっさんに西田敏行、与三郎の妻亜希子に松たか子、唯一の女子高生青葉に二階堂ふみ、その他、片桐はいり、皆川猿時、荒川良々と、癖のある役を上手(うま)くこなす役者が脇を固める。物語の鍵を握る男を監督の松尾スズキが演じている。
原作は、漫画家いがらしみきおの「かむろば村へ」。計算された笑いとアドリブ的な笑いを盛り込んだシュールなコメディー作品。「ジヌ」は東北地方の方言で「お金」という意味。現在公開中。(佐野富成)