白鵬がV34、歴代最多優勝の記録を更新
「言葉」なき優勝、自在の攻めで雑音封じ
激しく突き合った次の瞬間、日馬富士が懐に飛び込んできた。左上手を許した上に頭もつけられてしまい、白鵬は懸命に右半身でこらえた。下手投げで応戦し、蹴返しも繰り出す。徐々に体勢を整え、最後は右の差し手を返して寄り切った。
結びの一番でようやく決めた優勝。この日も支度部屋では報道陣の取材に応じず、表彰式の土俵下のインタビューにだけ口を開いた。「内容が満足できる相撲が多かったので、それを信じてやれた」。少し晴れやかな表情だった。
序盤はばたついた相撲が、3日目以降は安定してきた。得意の右四つ、まわしにこだわらず、流れに応じて喉輪で攻めるなど抜群の勝負勘が光った。「一つ、二つ上をいったような相撲内容だった」と自賛した。
初場所後に審判の判定を批判。大横綱にふさわしくない言動で物議を醸した。周囲の雑音を「優勝」で封じたいという意地が、集中力を支えたようにも見えた。
土俵下での質問に、「いろいろ騒がせましたけど…まぁ…頑張ります」と言葉に詰まる場面もあった。騒動の影響を引きずった春場所で、自身の心中を表現できる言葉までは見つからなかった。