「これからも決して阪神大震災を忘れない」


震災から20年目、神戸市の成人式で犠牲者に黙とう

「これからも決して阪神大震災を忘れない」

神戸市で12日に開かれた成人式では、振り袖などに身を包んだ約9800人の新成人が門出を祝った。1995年1月の阪神大震災から間もなく20年。震災の年度に生まれた若者たちは、犠牲者に黙とうをささげ、震災後に生まれた曲を合唱した

 成人の日の12日、神戸市のノエビアスタジアム神戸で開かれた成人式では、振り袖やスーツに身を包んだ約9800人の新成人が門出を祝った。1995年1月17日に発生、同市などで6434人が犠牲となった阪神大震災から間もなく20年。震災の年度に生まれ、復興の歩みとともに成長してきた若者たちは、犠牲者に黙とうをささげ、「これからも決して阪神大震災を忘れない」と誓った。

 式の企画運営スタッフで神戸女学院大2年の田中麻友里さん(20)神戸市西区は、「今まで大人たちに守ってもらっていた分、周りの人を守らなければいけない立場になった」と実感する。震災時は生後4カ月。東京に出張していた父靖雄さん(57)は、丸一日かけて帰宅して初めて家族の無事を知り、「よかった」と麻友里さんを抱きしめたという。断水が続いたが、麻友里さんのためにと、近所の人が水を分けてくれた。

 震災の直接の記憶はないが、周囲からは「震災を経験した最後の世代」と特別視されてきた。成長し、あの日神戸で何が起きたのかを知るにつれ、「忘れてはいけない」という気持ちが強まった。高校生だった2011年には、東日本大震災の発生で改めて日常の尊さに感謝した。

 「せっかく神戸に生まれたんだから、みんなが何かを吸収できるような成人式に」。そんな思いから、震災後に生まれた合唱曲「しあわせ運べるように」の合唱や、1分間でできる防災訓練「シェイクアウト」、楽天の三木谷浩史会長兼社長ら神戸ゆかりの著名人のメッセージをプログラムに盛り込んだ。「成功したと思う」と笑顔を見せた。

 将来の夢はまだ模索中。誓いの言葉の最後に、今の思いを盛り込んだ。「私たちの未来はまだ始まったばかりで、可能性は無限大。あすの神戸、未来の日本を支え、世界をリードしていく」。20歳の視線はしっかり前を向いていた。

 東日本大震災のボランティアで東北にも行ったという神戸親和女子大2年の御藤那帆加さん(20)神戸市西区の夢は、両親と同じ教職の道を歩むこと。式に参加し、「大人になって、これからは私たちが地震のことを伝えていかなければと思う」と話した。