福島・川内村、年越しそばを今年は地元産で
準備に追われる、そば店の店主「川内の新そばは感慨深い」
東京電力福島第1原発事故で多くの住民が避難した福島県川内村。事故から4回目の大みそかを前に、村内のそば店では29日、事故後初めて地元産のそば粉を使った年越しそばの準備に追われた。
「川内の新そばを打てるのは、感慨深いものがあるね」。川内村上川内のそば店「天山」。店主の井出健人さん(34)は4畳の製麺場で、長さ1・5メートルのキリの棒でたたいて伸ばしたそば生地を、そば包丁で切り揃えた。打ち立てのそばは、村内外に発送される。
天山は2008年に開店。福島県特産のソバの品種「会津のかおり」を使った十割手打ちそばが好評で、観光客が少ない平日でも60~80食が売れていた。
しかし、原発事故で村は住民のほとんどが避難。店は休業を余儀なくされ、本格的に再開したのは井出さんが埼玉県の避難先から戻った今年3月から。売り上げは1日40食程度に減った。
川内村では今年、約27トンのソバを収穫。12月からは原発事故後初めて、地元産のそば粉が市場に出回った。井出さんがフェイスブックでPRすると、村の内外から約60件の注文が来た。
住民2700人余りのうち、村に戻ったのは約6割。井出さんは「僕らみたいな若い人が頑張らないと、村がなくなる。住民に帰って来てもらい、うまいそばを振る舞いたい」と力を込めた。