宮沢賢治が転機の心象写す資料11点を発見
友人に宛てた自筆の書簡など、11月に「宮沢賢治展」で一般公開
作家で詩人の宮沢賢治(1896~1933年)が友人に宛てた書簡などの未発表資料11点が見つかった。古書収集家の川島幸希秀明大学長が24日発表した。大妻女子大の杉浦静教授は「賢治が宗教に傾倒するなど大きな転機を迎えた1918年前後の消息を示す貴重な資料」と話している。
発見されたのは、盛岡高等農林学校の同級生だった成瀬金太郎氏に16~20年にかけて送ったはがきや在学中のスナップ写真など。昨年、東京都内の古書店で入手した。
19年9月21日付のはがきでは、南洋ポナペ島(現ミクロネシア連邦ポンペイ島)在住の成瀬氏に、半紙刷50枚の宗教童話の頒布を依頼。法華経に傾倒し始めた当時の信仰心の強さが読み取れる。
一方、18年4月18日付の封筒には「(同封の絵はがきを)途中デヌスムモノガアッタラヒドイメニアワセテヤリマシャウ」と記し、「聖人君子のイメージが強い賢治の、おちゃめな一面ががうかがえる」(杉浦教授)。
このほか、背表紙を自ら塗りつぶしたとみられる「春と修羅」の単行本も発見された。同書を「心象スケッチ」と称した賢治は、背表紙に詩集と記されたことが不満で、ブロンズの粉で文字を消したと別の友人に伝えていた。発見された本は書名や著者名まで粉が塗られ、川島学長は「それだけ否定したい気持ちが強かったのでは」としている。
資料は11月8、9日に秀明大学(千葉県八千代市)で開かれる宮沢賢治展で一般公開される。