犠牲者74人、追悼行事「尊い命奪われ、痛恨」
広島土砂災害発生から1カ月、市長らが献花
74人が犠牲となった広島市北部の土砂災害は20日、発生から1カ月を迎えた。現場や市役所などで朝から追悼行事が行われ、献花した松井一実市長は「尊い命を奪われた皆さまをしのぶとき、痛恨の情を禁じ得ません」と述べ、冥福を祈った。
被害が集中した安佐南区八木地区の県営住宅前では、午前8時に広島県警の警察官ら約150人が整列。中国管区機動隊大隊長の末広秀典警視の号令で1分間、黙とうした。行方不明者はいなくなったが、遺留品などの捜索は続いており、末広大隊長は「被災者、市民、住民のため心を一つにして、与えられたことをやっていこう」と隊員らに呼び掛けた。
県営住宅の北東約400メートルの住宅3軒が流された現場では同7時すぎ、亡くなった宮村祐之さん(72)、逸子さん(71)夫妻と親しかった近所の主婦増田静美さん(69)が夫妻の冥福を祈った。増田さんは、花の好きだった逸子さんを思い、コスモスの鉢植えを置き、毎日水をあげに来るという。「朗らかでかわいらしい人だった。喜んでくれている気がする」と、そっと花びらに触れた。
同9時からは市役所1階の市民ロビーで、広島県と市の合同追悼献花が行われ、湯崎英彦知事、松井市長ら約110人が出席した。午後5時まで一般からの献花も受け付けており、同区緑井に住む娘夫婦を亡くした西村幸子さん(77)は「何も分からないまま1カ月が過ぎた。言葉では表せない」と花を手向け、涙を流した。
市災害対策本部によると、土砂災害による住宅被害は、全半壊255戸、床上床下浸水4111戸など。20日現在で同区八木、緑井両地区の918世帯2335人に避難勧告が継続中で、同区の避難所には、38世帯73人が身を寄せている。