米アップルの参入に期待と不安
腕時計型端末めぐる国内メーカー
米アップルが日本時間10日、腕時計型端末「アップルウオッチ」を2015年初頭に発売し、身に着ける情報機器「ウエアラブル端末」市場に参入すると発表した。ウエアラブル端末は黎明(れいめい)期にあり、アップルに市場活性化の起爆剤役としての期待が高まる一方、腕時計メーカーは一定の需要を奪われかねないと警戒を強める。
IT調査会社のMM総研(東京)によると、ウエアラブル端末の国内販売台数は13年度に40万台にとどまるが、アップルウオッチの発売などを契機にして20年度には604万台に拡大する見通しだ。
腕時計型は同じ基本ソフト(OS)のスマートフォンを通じてインターネットに接続し、情報検索やメッセージのやりとりができるものが主流だ。国内では現在、サムスン電子、LG電子といった韓国勢が販売するほか、ソニーも07年から手掛ける。MM総研は「身に着けやすいため、当面は中心的な存在。アップル参入で認知度は確実に上がる」(横田英明研究部長)と指摘する。
ソニーはアップルの発表に先立つ今月3日、米グーグルのOSを搭載し、声による操作が可能な最新モデル「スマートウオッチ3」を公表した。セイコーエプソンもジョギングしたコースや距離を記録できる「リスタブルGPS」を売り込む方針だ。「アップルの発売はまだ来年。先行メリットを生かして販売を伸ばしたい」(メーカー関係者)と期待が高まる。
一方、腕時計型端末の広がりを警戒するのが腕時計メーカーだ。機能が重視される腕時計型端末とブランド力が重視される腕時計の市場は根本的に異なるとの声が多い。だが、5万円以下の低価格帯は「侵食されるかもしれない」(大手幹部)との懸念がある。カシオ計算機のようにスマホ連動の腕時計を販売して迎え撃とうとするメーカーもあり、消費者の間での端末の位置付けが固まるまでは関連業界でも試行錯誤が続きそうだ。