映画「不機嫌なママにメルシィ!」
ママとボクの二役で笑いを誘う
フランスの誇る国立劇団コメディ・フランセーズの演技派俳優ギヨーム・ガリエンヌが監督デビューを果たした自伝的作品。脚本のほかに主役(ボクとママ)まで演じて、フランスで大ヒットした作品。
同じ物語をギヨームは2008年に舞台劇に仕立てて自作自演し、大評判になり、10年、優れた演劇人に贈られるモリエール賞を受賞。今回この映画では2014年セザール賞5部門を獲得した。
ボクは3人兄弟の末っ子として生まれたが、ママは女の子が欲しかった。そのためにママはボクだけを特別扱いし、ボクもまた優雅なママのようになりたくて、言葉遣いもしぐさもママを真似(まね)て大きくなる。
一方、父親は男らしさにこだわって、ボクを強く逞(たくま)しく男らしく育てようとする。
物語は舞台劇の要素を残し、ステージ裏の楽屋から舞台に登場する一人芝居の場面から始まり、時々場面はこの舞台に戻ってくる。コメディ・フランセーズの名優だけあって、ボクとママの二役が実にコミカルだ。
ボクはママとパパのそれぞれの教育方針にしたがって、いろんなところに勉強や訓練に行かせられる。スペインではフラメンコを学んだが、振り付けが女のものだと女性たちから笑われ、イギリスではミッション系男子系寄宿舎に入れられて、刑務所にいるような気分を味わう。そうした旅を繰り返しながら、やがて本当の自分を発見する。(岳)