需要高まる殻付き生ガキで付加価値を


タスマニア島で養殖技術の研修を、大震災被災地などから参加

需要高まる殻付き生ガキで付加価値を

タスマニア島のカキ養殖業者からバスケットを使ったカキ養殖技術の説明を聞く大山勝幸さん(左から2人目)ら=16日、オーストラリア・ホバート近郊(時事)

 日本ではオイスターバーが増え、殻付き生ガキへの需要が急速に高まっている。こうしたカキの先端養殖技術を習得し、販売単価を高めようと、オーストラリア・タスマニア島でこのほど、東日本大震災の被災地を含む日本各地の養殖業者や研究者が参加し、研修会が開かれた。

 タスマニア島のカキ養殖は、「戦後に宮城、広島、熊本からマガキを輸入したのが始まり」(タスマニア州政府幹部)で、日本との縁が深い。需要の9割超を占めることから、殻付き生ガキ用の養殖技術が発達した。

 日本の養殖は、天然で発生する稚貝を採取(天然採苗)し、針金で海中につり下げる方法が主流で、殻や身のサイズにばらつきが大きくなりやすい。一方、豪州では(1)人工採苗(2)バスケットを使った養殖(3)分別作業の自動化-が特徴。生産コストは高めながら、殻の形がそろい、見栄えがするカキが生産されている。

 宮城県石巻市から参加した桃浦かき生産者合同会社代表の大山勝幸さん(67)は、「震災で養殖設備を失い、ゼロからスタートした。新たな技術に挑戦し、付加価値を高めたい」と意気込み、豪州式養殖をつぶさに学んだ。鍋用が主力の日本では、むき身でカキを出荷するのが一般的。単価が高い殻付きカキの生産を増やせれば、経営の安定化につながる。

 研修会はオーストラリアの在日大使館と在大阪総領事館が、両国生産者の交流促進や被災地支援の一環として企画。北海道のほか宮城、三重、広島、福岡、佐賀、熊本、大分各県から計12人が参加し、16日から18日まで島内各地の養殖場で技術を学んだ。(ホバート〈オーストラリア〉時事)