「魔法の水」好適環境水で山村を漁村に


カンボジアで高級エビ陸上養殖、岡山理大の人工飼育水を活用へ

「魔法の水」好適環境水で山村を漁村に

岡山理科大の山本俊政准教授。後方は好適環境水を使ったウナギの養殖用水槽=4月23日、岡山市の同大

 カンボジアの山村で、岡山理科大の山本俊政准教授が開発した「好適環境水」を使ったエビの陸上養殖プロジェクトが8月から始まる。陸上養殖は途上国の栄養改善や貧困対策につながると期待されるが、魚介類の病気が大きな課題だ。好適環境水は病原体が繁殖しにくい特長を持ち、山本准教授は「薬剤なしで養殖できる魔法の水。山村を漁村に変えられる」と語る 。

 好適環境水は、ナトリウム、カリウム、カルシウムなど魚類の生育に必要最低限の成分を真水1リットル当たり計約10グラム混ぜて作る。塩分濃度が魚類の体内とほぼ同じで、なめるとわずかに塩味を感じる。コストは人工海水の10分の1以下で、2012年に特許を取得。これまでトラフグやウナギなどの養殖実績がある 。

 自然界にはない性質のため、海水や淡水由来の病原体が存在せず、魚が病気にかからない。また、通常より早く育つが、これは淡水や海水中で必要な浸透圧の調整にエネルギーを費やす必要がないためとみられる。岡山理大では、海面養殖よりも6~8カ月早いサイクルでトラフグを出荷している 。

 プロジェクトは、国際協力機構(JICA)がカンボジア内陸部のタケオ州で行う。現地で一般的な魚の8倍の価格で取引される高級食材「オニテナガエビ」を3カ所の養殖農家で3万尾ずつ養殖。好適環境水の導入による効率性やコスト削減効果を実証する。JICA農村開発部の金子健二企画役は「好適環境水は、途上国での陸上養殖技術振興に役立つ可能性が非常に高い」と期待する。