尹錫悦氏、青瓦台から韓国大統領府移転を検討


「常に国民と交流しながら仕事を」、歴代政権は実現に失敗

尹錫悦氏、青瓦台から韓国大統領府移転を検討

ソウルにある韓国大統領府(後方の建物)=2017年3月(AFP時事)

 韓国の尹錫悦次期大統領が選挙公約で掲げた大統領府移転の検討が本格化している。尹氏側は17日、移転先候補を外務省庁舎と国防省庁舎に絞ったと発表。ただ、歴代政権は移転実現に失敗しており、紆余(うよ)曲折が予想される。

 尹氏は1月、「常に国民と交流しながら仕事をする」と強調し、市民が自由に行き交うソウル中心部・光化門にある政府庁舎に大統領府を移し、現在の大統領府(青瓦台)は国民に開放すると公約。「(5月10日の)任期初日から新たな空間で国政を始める」と表明した。

 青瓦台は旧王宮「景福宮」の背後の高台にあり、光化門から北に約1キロ離れている。権威的なイメージから脱却するため、文在寅氏をはじめ歴代大統領が移転を模索したが、警護面などが障害になり断念した。

 しかし、「尹氏の意志が強い」(周辺)とされ、尹氏の報道官は18日、「春の花が散る前に国民に青瓦台を返す」と、就任前の準備完了を目指す考えを強調した。

 外務省庁舎は光化門にあり、公約の趣旨に沿うが、周囲には高層ビルが多く、警護などの問題が指摘される。国防省庁舎は警護上は有利だが、約束した「光化門」でない上、市民と隔絶した場所にある。国防省や軍合同参謀本部の移転が避けられず、軍事上の問題も挙げられる。

 野党になる「共に民主党」は批判的。尹氏側でも「国政で急がれる重要なことは何かを考えてほしい。時期を決めて推進すれば無理が生じる可能性が高い」(任太熙特別顧問)と拙速を戒める声が出ている。(ソウル時事)