ウクライナ、膨れ上がる避難民「いつか戻る」
10日間で150万人を突破、ポーランド国境にあふれる
ロシア軍による攻撃が激しさを増すウクライナから、隣国へ逃れる避難民の数が膨れ上がっている。2月24日の侵攻から10日間で150万人を突破。多くは「いつかは祖国へ戻る」と口にするものの、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はウクライナ人口の約1割に相当する約400万人が国を離れる恐れがあると懸念している。
ウクライナ国境近くのポーランド南東部プシェミシル。中心部の駅には6日も国境を越えた列車が到着し、避難民が構内にあふれ返った。
ホームでは、妹らと3日かけてウクライナ南部クリブイリフから逃れてきたガリナさん(52)が力なく座り込んでいた。空爆を警告するサイレンが鳴り響き、食料品が底を突き始めた暮らしにおびえ、避難を決めたという。3歳の孫が地下シェルターへ隠れる姿に「小さい子の心に深い傷を残した戦争が許せない」と憤る。
男女4人の子供と妻を連れたイワンさん(34)は、自宅のある首都キエフ北東ブロバルイが攻撃された。2014年のロシアのクリミア半島併合や東部紛争で従軍した経験から、ロシア軍の脅威は身に染みている。18~60歳の男性の出国が禁じられる総動員令のさなかに国を離れたが、「子供の将来と家族の安全のため。逃げる気持ちはなかった」と涙目で訴えた。
駅ではNGOなどが温かい食料などを無料で提供して支援を続ける。1日8000食分の炊き出しを手伝っていたポーランド人男性は「(避難民は)毎日増えている印象だ」と話し、対応に追われていた。
キエフから逃れたアーニャさん(14)は列車と車を乗り継ぎ、最後は約14キロ歩いてポーランド入りした。キエフに残った両親は地下生活を強いられ、駅まで見送りに来た母親と「絶対に大丈夫。必ず状況は良くなる」と別れを惜しんだという。ポーランドの駅へ出迎えに来た伯母に笑顔を見せ「私は負けない。この試練を必ず乗り越える」と力を込めた。(プシェミシル=ポーランド=時事)