北欧、ウクライナ侵攻でNATO加盟論が強まる


フィンランドとスウェーデンで、世論調査では過半数が支持

北欧、ウクライナ侵攻でNATO加盟論が強まる

フィンランドのマリン首相(右)とスウェーデンのアンデション首相=5日、ヘルシンキ(AFP時事)

北欧、ウクライナ侵攻でNATO加盟論が強まる

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、軍事的中立を維持してきた北欧のフィンランドとスウェーデンで北大西洋条約機構(NATO)加盟論が強まっている。両国の最近の世論調査では史上初めて加盟支持が過半数を占めた。両国の動向は欧州の戦後の安全保障体制の転機につながる可能性がある。

 「今、その議論が行われている。議会や政府内、政党間で議論していく」。フィンランドのマリン首相は5日にこう述べ、NATO加盟をめぐって積極的に検討する考えを示した。

 フィンランド放送協会(YLE)が2月下旬に実施した世論調査では、国民の53%が加盟申請を支持し、史上初めて多数派になった。2017年の前回調査では支持が19%にとどまっており、世論の急激な変化を映し出した。

 1917年にロシアから独立したフィンランドは、第2次世界大戦中に旧ソ連と2度戦うなど、国境を接するロシアの強い圧力にさらされてきた。このため、戦後はNATOに加盟せず、中立を維持してきた経緯がある。

 一方、隣国スウェーデンも1815年のナポレオン戦争終結以降、200年以上にわたって中立を保ってきた。しかし、地元有力紙などが今月4日に公表した世論調査では51%の国民がNATO加盟を支持。1月の42%から上昇し、やはり史上初めて過半数となった。

 NATOの東方拡大阻止を図るロシアは反発している。ロシア外務省のザハロワ情報局長は2月下旬、「フィンランドとスウェーデンがもしNATO加盟を申請すれば、何らかの軍事的・政治的な結果に直面する」と警告した。

 しかし、この脅し文句はむしろ逆効果となった。ウクライナ侵攻を目の当たりにした両国は活発な外交を展開する。今月5日には両国首脳が安全保障協力の強化で一致。これに先立つ4日にはフィンランドのニーニスト大統領が米国を訪問し、バイデン大統領とNATO加盟について意見交換した。NATOもこれを歓迎している。ストルテンベルグ事務総長は既に非加盟の両国を一連の会議に招待。「もし両国が申請すると決めれば、迅速に加盟させることは可能だ」と語った。(ロンドン時事)