北京冬季パラ開幕、パラアスリートが問う平和
ウクライナ侵攻の戦火消えず、混乱の中、異例の祭典に
共生社会と平和をうたうパラスポーツの祭典が、重苦しい世界情勢の中で幕を開けた。ロシアのウクライナ侵攻。世界中から非難の声が上がり、政治や経済の混乱を招いた。難民が増え続け、戦火は消えない。スポーツに真摯(しんし)に取り組むアスリートにとって、晴れ舞台とはおよそ懸け離れた雰囲気だ。
ウクライナ選手団は戦災を逃れ、陸路で長時間かけて中国にやってきた。ウクライナ・パラリンピック委員会のスシュケビッチ会長は言い切った。「ここにいることが象徴するのは、ウクライナが国として存在すること。大会に来ないことはあり得なかった。われわれの目標は平和だ」
一方、現地で練習していたロシアと同盟国ベラルーシの選手は、開会式前日に除外の決定を受けた。一度は出場を認められながら、周囲の反発で運営に支障をきたすと判断され覆った。冬季パラの強豪で知られ、国際大会を通じて親交のある日本選手も多い。アルペンスキー男子のある日本選手は「複雑さを感じ、葛藤がある」と言った。
為政者の軍事行動で、理不尽な思いをさせられた選手たち。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は、大会から去る選手を「犠牲者」と表現した。
ロシアが国連総会による「五輪休戦決議」に違反したとされる中、異例の大会が始まった。先の北京五輪では、ドーピングやルールの適用をめぐって、スポーツの公平性と高潔さについて議論を呼んだ。パラアスリートの躍動と言葉が今、祭典の意義を問う。(時事)