サハリン資源開発、日本勢に迫られる難しい判断


米欧は相次ぎ石油・天然ガス開発から撤退、関与継続に逆風

サハリン資源開発、日本勢に迫られる難しい判断

ロシア極東サハリン沖油田の採掘施設=2003年4月、サハリン(AFP時事)

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米欧の資源メジャーが極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業からの撤退を相次いで決めた。事業は日本のエネルギー安全保障上、重要なプロジェクトと位置付けられ、政府や企業が深く関与している。しかし、米欧がロシアに対する強力な経済制裁を打ち出す中、日本の関与継続に逆風が強まっており、日本勢は難しい判断を迫られている。

 米石油大手エクソンモービルは1日、主に石油を生産する「サハリン1」から撤退すると発表した。サハリン1は、日本の官民出資会社サハリン石油ガス開発(東京)が3割の権益を保有。同社には経済産業省が50%出資し、伊藤忠商事や石油資源開発、丸紅なども出資者に名を連ねる。エクソンの撤退について、サハリン石油ガス開発は「情報収集中で、今後対応を検討する」と話す。

 資源の乏しい日本は、原油の大半を中東からの輸入に依存している。「サハリン1は調達先を分散できる重要な権益。簡単に撤退はできない」(資源エネルギー庁幹部)のが実情だ。

 三井物産が12・5%、三菱商事が10%を出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」からは、英石油大手シェルが撤退を表明した。サハリン2の天然ガス生産量の6割が日本向けで、東京ガスの場合、輸入量の1割弱に相当。購入量の約半分をサハリン産が占める広島ガスは「経済制裁などで影響が出ることを懸念している」(広報)という。エネルギーの安定供給に支障を来せば、地方経済に影響が広がる懸念もある。

 三井物産の安永竜夫会長は2日、東京都内で記者団に、ロシアでのエネルギー事業について「継続するかどうかも含め政府と協議している」と語った。ウクライナへの連帯を示しつつ、エネルギーの安定調達も求められる中、日本のサハリンプロジェクトへの関与は窮地に立たされている。