高木美帆が金メダル、無心の滑走で頂点
スピードスケート1000m、最下位から12年、念願かなう
中学3年で出たバンクーバー五輪の女子1000メートルは、最下位の35位だった。あれから12年。27歳になった高木美がついに金メダルをつかんだ。日の丸をはためかせて誇らしげに笑うオールラウンダー。大会ラストのレースで「自分の全てを出し切ることができた」。会心の滑りだった。
13組のインスタート。最初の200メートルは同走のゴリコワらに並ぶ17秒60の全体1位で通過した。「結構、良いスタートが切れているな」。気分も乗った。
念頭に置いたのは、銀メダルを引き寄せた500メートルのイメージ。「力強いけど伸びのある滑り」。無心で足を動かす。しかし600メートルの通過は、11組で滑り終えていたレールダムよりわずかに遅れた。
レース中、デビット・コーチの最後の助言が頭をよぎっていた。「疲れても、滑りは変えるな」。焦りそうな自分を落ち着かせ、氷をしっかり抑える滑りを心掛けた。最後の力を振り絞ってゴールすると、電光掲示板には五輪新の表示。「やったぜ」と両手を突き上げる。最終結果が出ると、コーチと固く抱き合い、銀に終わった団体追い抜きの時にも流した涙があふれた。悔し涙ではなく、今度は歓喜の結晶だった。
極限まで自分を追い込む競技で5種目を滑り切り、銀3個を含めて四つのメダルを獲得。滑走のたびに激しいせきを整え、「内臓というか体の中の方がぎりぎりだった。結構限界が来ていた」。世界記録を持つ1500メートルでも、連覇が懸かった団体追い抜きでも届かなかった頂点。ぼろぼろになっても自分を信じ抜いた姿は、金メダリストにふさわしかった。(時事)